憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

笑う女・・14

2022-08-19 20:54:31 | 笑う女

7月いっぱいで、此処をやめる。
そう決めたからこそ、俺はいっそう、
笑子をかまいたかった。
俺が居なくなっても、徳山と江崎が
笑子の楽しみを継続させてゆくだろうから、
俺の必要性など、どこにも見当たらず
事実は、俺の欲望を満足させているだけに過ぎない。

ただ、俺は俺の中で
自分だけは徳山や江崎とは、
笑子への対峙感情が違っていると
自負していた。

奴らは笑子を呈のいいはけ口にしている。
比べ、俺は少なくとも
笑子に愛情とは、呼べないが
一種、情・・・。
情が映っているといっていいだろう。

それは、特殊な情といっていい。
笑子によって
男の部分を満足させられているからこそ、
沸いてくる類いのものだ。
笑子を義務的、あるいは、事務的に
あるいは、職務的に
世話をしているだけの俺だったら、
笑子の性への希求にほだされることもなく、
憐れを感じることも無かった。

笑子がもっとも、人間らしい本能に目覚めた事を
どこかで、喜ぶ俺がいるくせに、
愛をはぐくむ事のない不毛の行為に喜悦する笑子を
時に愛を融合させる行為であることさえ、知らない笑子を
悲しいと思う。

そのくせ、俺もまた、笑子をもてあそぶ。
その痛みを感じていることだけが
逆説的に
俺の笑子への情であるという。

だからこそ、俺にとっても、
笑子にとっても、
この行為の根底に
精神的なボランテイアが介在するといってもかまわない。

たちもしないいいわけと、
通じるはずも無い理屈。
簡単に理解できまい俺の感情と
到底、上手く説明できない俺の感情。

ただ、それでも、俺の姿を見つけると
いとおしい恋人のように
俺を欲しがり、俺を迎え入れる笑子に
男女の肉欲が呼応しただけのものとは違う
肌を触れ合ったもの同士だけに
うまれいずる「馴れ合いの情」が芽吹いていた。

だが、それも、
いずれ、オサラバ。

共に、この先をあゆむ事のない
パートナーに成りえない
対等にはけしてなりえない
ただ、与えるだけの笑子への
感情こそ俺に不必要で
俺は、やはり、仕事は、
義務的に
事務的に
職務的に
こなすのが自分を苦しめず
貶めずにすむと気がついた。

そして、
実生活・・
俺の個人生活において、
自分の欲望にさえ、うしろめたさをもたず、
真っ直ぐに結ばれる喜びにひたれる、
そんなパートナーをみつけてもいい頃だと考え始めていた。

俺の餓えと笑子の希求が
重なって、奏でたハーモニーは
不協和音として
いつか、俺の耳の底から零れ落ち
思い出したくても
思い出すことができない
遠い昔のメロデイになるだろう。

俺の中の感情に決着がつき、
俺はもうしばし、
笑子に快楽を奉仕し、
もうすこししたら、ここを辞め・・・

そうだな・・・
故郷へ戻ろうか・・・。

俺の予定が意外なことで
崩れ去ることも知らず
俺はまた、今日も、笑子を堪能し
行為を終えると
もう暫くの笑子との特殊な逢瀬で
笑子をどうたのしませてやろうかという、
「笑子のため」気分に浸りこんでいた。

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿