なんで、こんなに、それも、突如、スランプになってしまったのか、
自分でもわからない。
ただ、ひとつの救いはスランプのまま、これ以上悪あがきの写真をとらなくて良くなったことだろう。
帰国命令がでたと看護師に伝えると、
「あら?」とびっくりしてた。
されは、彼女もまた、私が写真をとりきれてないことを察していたからに違いない。
「う~~ん。そうかあ・・」
と、彼女はうなづくしかない。
まさか、引き止めてここにいろというわけにもいかないから
当たり前のことだけど
やっぱり、感ずいていたんだ。
「写真・・とれてたんじゃないの?」
余計な詮索になるとわかっているのだろう。
とれてないんでしょ?と、ずばりと聞いてこなかった。
「うん」
情けない顔をさらけてしまったんだろう
「チサト!チサトはもっと素敵なことをやってきてるじゃない」
と、いいだす。
おいでと彼女があたしの手をひっぱると
テントの中にはいっていった。
そして、あのおかあさんの傍にあたしをひっぱっていった。
看護師とおかあさんはなにか、片言でわからない会話をかわしていたけど
おかあさんは立ち上がるとあたしに腕の中の赤ん坊をそっとさしだした。
「だっこしてあげて、って」
お母さんの言葉を彼女が通訳してくれていた。
ほんの二日ほど前のことなのに
もう赤ん坊はしっかり育っている気がした。
こんなに重たかったかなと想っていると
「チサト。チサトですって」
あ?
本当におかあさんは私の名前を赤ん坊につけてくれていたんだ。
「チサトはもう帰らなきゃいけなくなったって
伝えたの」
あかさんはすぐなにか、いった。
「ありがとう。って、いってるのよ」
あ・・
あたしは・・不覚にも涙を落としてしまった。
赤ん坊・・ううん、チサトをおかあさんに渡そうとすると
看護師が
「ちょっと、まって。そのまま。チサトのカメラかしてくれる?」
かまわないけど・・・
そして、看護師は、チサトとチサトとおかあさんの3人一緒の記念写真をとってくれた。
その写真を今、あたしは、飛行機の中で見てる。
写真って、こうあるべきなんだって想う。
チサトという生命の誕生の秘話を隠しながら
一瞬をきれいにきりとっている。
ずぶの素人でしかない看護師だけど
記念にと、写真をとってくれた思いもありがたい。
「ちいちゃん、おおきくな~れ」
再びあうことはないかもしれないけど
一つの命にかかわれたことが
こんなにも、胸をあつくする。
あたしのちっぽけなみじめさも
慎吾への憤りも一瞬でとかしてしまう。
おかあさんの言葉とちいちゃんの姿。
一生懸命・・
慎吾だって、一生懸命だったんだとおもったら
編集長に認められるほどの会心作
やっぱり、見てみたいと想った。
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