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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

ー銀狼ー 20  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:41:28 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話

「言霊をご存知ですね?」

答えをしっているのは、澄明しかない。

雷神は、唐突な質問が、答えの手引きであると、解すると、尋ね事の返事だけをかえすことにした。

「知っておる」

「言霊が発動するとき、言霊を発した本人が、今、言霊を発動させるぞと、お思いになって、言葉を発しますか?」

「いや。それは、まず、無い。

当て込んだ思いでは、言霊は発動しない。

思い誠の真に天がのってくる。

だから、時に、とんでもない思いであっても、

真剣におもっていると、その言葉をかなえてやろうと、言霊が発動されることもある」

「おっしゃるとおりです。

今の話は、言霊の話しですが、貴方がおっしゃったように、「思いに乗ってくる」という事が根本です。

ですから、言葉にしなくても、事象がおきるということは、ご理解いただけますね?」

「うむ」

うなづいた口から、疑問がこぼれてくる。

「だが、それがどうしたという」

いっさい思い当たっていない雷神である。

「確かに私はいづなをうとんだこともある。

だが、いづなを朋友と思うその気持ちと、一時の感情と、引き比べてみれば、どちらが、誠であるか・・」

云とうなづく澄明をみて、雷神は言葉をとめた。

いわずもがなの自明の理でしかないということなのだろう。

「言霊・・あるいは思霊というべきでしょうか。

雷神である、貴方なら、わかることだとおもいます・・」

大きく息を吸い、深く、長く、吐き出すと澄明は続けた。

「たとえて言えば、貴方が電撃を貯める。それだけでは、雷はおきません。

貴方が電撃を放る・・そこで、初めて、雷が生じる。

電撃のかさが大きいか、小さいか。という問題ではないのです。

貴方が、放ったか・放たなかったか・・ということです」

しばし、考え込んだ後雷神が尋ね返した。

「つまり、朋友と思っている誠がいくら大きくても、

うとましいと思った思いのほうがいくら小さくても、

うとましいという思いを放ってしまった・・と??」

「大きくても、小さくても、放てば、それは鋭い根源力をもちえます」

「朋・・友・・だと思う気持ちは、はなっていないというか?」

「違います・・・」

雷神の電撃にたとえたことが、かえって雷神を混乱させてしまったようである。

どう、説けば、雷神の腑に落ちるかと考える澄明は、寸刻、沈黙を結んでいた。

その沈黙の堰を破ったのは、白銅だった。

「ひのえ。海だ・・」

その一言が澄明の脳裏に荒れ狂う波をうかばせていた。

「あ・・」

おもいうかんだことを、そのまま、口にするだけでよい。

白銅の助け舟にささえられ、澄明はよどんだ堤の堰をきった。



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