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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

ー銀狼ー 2  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:46:43 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話

「なるほど・・」

使いなるもの大きな黒い山犬だった。

山犬は澄明に背をむけ、背中におぶされと示す。

「おまえのあるじは、いったい、どうなっておる?」

澄明の問いかけに答えず、澄明がせなにつかまると山犬ははしりだした。

飛ぶがごとく、谷をこえ、岩をとび、みるまに、烏たちがとびさわぐ森のきわにおりたった。

山犬はおおきな岩のむこうに一礼をし、澄明の到着をしらせていた。

そこにーなにものかーがいるのは、間違いが無い。

澄明は大きな岩にむかって、歩んでいった。

「あっ」

澄明の眼に無残な死骸が見えた。

落石だったのだろう、大きな岩におしつぶされ、灰色の狼がひしゃげ、ひからびていた。

「生きている?」

見た目は確かに死骸だったが、灰色の狼は澄明に確かに語りかけた。

「この有様だ」

「いったい・・どうして?」

澄明よりも、高い法力をもっていると思える銀狼が落石にのまれるのが、不可思議に思える。

「山の主の意趣返しだ。避けられぬ」

「意趣返し?山の主を怒らせたのか?」

「ああ。遠い昔に・・。わたしが不死身になったのも、山の主の呪詛をかぶったからだ」

「いったい・・」

なにをしでかして、山の主を怒らせたのか、判らぬが、

銀狼を不死身にするという意趣返しをかぶせられるということが、

山の主の怒りの深さを物語っていた。

銀狼が生き永らえている事自体が山の主の怒りの表れでしかない。

一思いに銀狼の息の根をとめるでは、おさまらぬ怒りがあるといえる。

哀れに岩の下で生きながらえる銀狼であるが、それでも、周りを見渡せば、

そちこちの物陰に山犬達が潜んでいるのが判る。

どうやら、山犬の頭として、群れを引き連れていたらしい。

山の主の懐に住むものでしかない銀狼が、なにをしでかせたというのだろうか?

今、この銀狼を岩の下から救い出しても、山の主の呪詛を解かぬかぎり、

銀狼は呪縛から解放されない。

そのためにも、まずは銀狼がしでかした事を知るのが、早い。

山の主の怒りを解くにも、原因がわからぬでは、解くに解けない。

「おまえの白峰大神と同じことよ」

澄明の思いを掠め取った銀狼はしでかした事がなにであるか、澄明に告げた。

やはり、銀狼は澄明より、よほど、上の法力を持っている。

澄明が銀狼の思いひとつ、読み取ることが出来ないのに

銀狼は澄明の過去まで探り当てていた。

「それは・・どういうことだ?」

銀狼はくすりと笑ったように見えた。

「だから・・おまえには、話せるといった。今から、話すが・・おまえ、犬神をしっているか?」

銀狼がそこまで、澄明に語りかけたとき、物陰に身を潜めた山犬の隙を狙って、猩猩が木々から降り立ち始めた。

とたん、物陰から山犬が飛び出す。

猩猩が、銀狼になにかをしでかすのを防ぐかのごとく、すばやさである。

「猩猩もこの身をひきちぎりにくる。烏どもも、この眼をほじくろうとする。

奴らはみな山の主に操られている」

銀狼を守るために、山犬たちは猩猩を烏のねぐらに追い込んだのだ。

猩猩に食われまいと烏の攻撃の的は銀狼から猩猩にかわり

山犬が見張るのは猩猩だけでよくなった。

『そうか・・・それで・・・猩猩が、森から下りれなかったわけか・・・』

だが、いつまでも、猩猩を森に追いやっているわけには行かない。

まずは、この岩から銀狼を助け出し、安全な場所に身をうつすが、先決である。

「話はゆっくり、聴く。まずは、この岩から、お前の身体を出す。私の仲間をここに呼んでもらえまいか?」

澄明の言葉に銀狼は承諾をみせた。

「呼ぶのは、かまわぬが・・。山の主の呪詛を・・・」

言いかけた言葉が止まると、しばらく、澄明を読み下すようであった。

「なるほど」と銀狼が頷いたのは、澄明が榛の木に囚われた雷神を救った法を手繰ったせいである。

「おまえなら・・・山の主の呪詛をほどけるかもしれない」

銀狼がうなづくと、澄明は白銅はもとより、不知火、九十九に式神を飛ばした。

銀狼の指図で、3匹の大きな山犬が飛ぶがごとく走り去るのを見送ると

澄明は、銀狼に尋ねた。

「白峰大神とおなじとは、いかなることだろうか?」

銀狼は澄明の問いに先と同じ言葉を返してきた。

「犬神・・を、知っておるか?」



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