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平山郁夫画伯と竹下登元首相

2024年11月30日 04時14分49秒 | エッセイ・私事など

<以下の記事は2009年12月3日に書いたものです。>

平山郁夫画伯

日本画壇の第一人者と言われる平山郁夫さんが昨日死去した。享年79歳。
さて、絵画について素人の私は平山画伯を語る資格はない。ところが昨日、平山さんが他界されて、ふと、どうでもいい話を思い出した。以下のことは絵画という芸術とは関係ない話だから、何だつまらないと思われたらここから先は読まないでほしい。断っておくが、あくまでも閑話・無駄話なのである。

さて、もう20数年前のことだが、私が某テレビ局の記者として旧大蔵省(現在の財務省)を担当していた時、大蔵大臣は竹下登さんだった。竹下氏は後に首相を務めるなど自民党の大物議員として活躍したが、当時は“ニューリーダー”として着々と力をつけている時期だった。
「記者懇談」というものがある。これは原則、内容を記事にしてはならないもので、仮に記事にするとしても、誰が話したかを明らかにしてはならないものだ。
ある日、竹下大臣の記者懇談があった。その日は大した話はなかった。そうなると大臣と記者の“雑談”になるのだが、竹下さんは議員在籍25年になるというので、中身はその話題になってしまった。

すると竹下氏は、同僚で同期当選の金丸(かねまる)信氏について「金丸は面白いヤツだ。肖像画を○○という有名な洋画家に頼んだそうだ。その画家は鼻を高く描くのが上手いそうで、そうなるとあの“団子っ鼻”をどう描くのだろうか」と皮肉っぽく言ったので、われわれ記者団は大笑いした。
議員在籍25年になると、その人の肖像画が国会内に掲げられるのだ。そこで金丸さんはある有名な画家にそれを頼んだというのだが、竹下・金丸両氏は子供同士が結婚しているから親密な縁戚関係にある。したがって、二人ともいつも「金丸」「竹下」と呼び捨てにする間柄だった。
金丸信を肴(さかな)に話をしていたが、ある記者が「大臣、あなたは誰に肖像画を描いてもらうのですか?」と聞いた。

その時の竹下氏の表情は今でも忘れられない。待ってましたと言わんばかりに、彼はおもむろに低い声で「平山郁夫さんです」と答えた。ほう~っという溜息のようなものが記者の間から漏れ、その場は静まり返った。しばし沈黙が続いた。
いかに無粋な仕事をしているとはいえ、大蔵省(財研)担当の記者でも平山郁夫画伯の名前ぐらいは知っている。後で考えると、竹下氏は自分の“肖像画”のことを聞いてほしかったに違いない。内心得意だったのだ。だから、まず金丸さんのことを肴(さかな)にして話を誘導していったのだろう。

『大蔵省』の記者なら当然、平山画伯に肖像画を頼めば値段がいくらかと聞きたくなるだろう。しかし、誰も聞かない。私も聞かなかった。聞いたって答えないだろうし、もし本当の値段を言われたら、腰が抜けたかもしれない(笑)。
それはともかく、平然と「平山郁夫さんです」と答えた竹下氏は、当時ニューリーダーと呼ばれていたが、これは総理大臣になるのかなと思った。事実、それから数年して彼は総理に就任する。

さて、絵画の値段など全く知らないが、ゴッホほどではなくても、平山画伯の絵は非常に人気があるので大変な値段らしい。1号(ほぼ葉書大)で100万円とかそれ以上と言われるから、肖像画だったらどのくらいするのだろうか。
まあ、そんな話は止めといて、平山画伯が死去したことに伴い、竹下登氏の昔話を思い出したので記したまでだ。そう言えば、これは“オフレコ懇談”だったか・・・まあ、いいだろう。あれから20数年たっているから、とっくに時効のはずだ(笑) (2009年12月3日)


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4 コメント

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Unknown (おキヨ)
2020-01-14 12:49:44
平山画伯が著名な政治家の肖像画を描く・・・、あったとしたら観たいものですね^^

シルクロードで出会った絵心をそそるような人物などはたくさん描いていますが、日本の政治家の顔を考えると・・・(~_~;)
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驚き (矢嶋武弘)
2020-01-15 10:24:58
実は数日前、NHKのテレビで平山画伯の特集番組を見て感動しました。それで過去の記事を思い出し掘り出した次第です。

昔、大臣室でこの話を聞いた時は、正直言って驚きました。あの平山画伯に肖像画を描かせるとは・・・と。
しかし、国会議員にとって、在職25年で肖像画を議事堂の中に掲げられるということは、非常に名誉なことです。だから、竹下や金丸に限らず、多くの議員は最高の肖像画を描いてもらおうと努力します。
ただし、金もかかるので、野党の議員の中には困ってしまう者もいましたね。
でも、竹下や金丸はどうってことはなかったのでしょう(笑)。相当な御礼を平山さんにはしたと思います。
肖像画は西洋でも多く見られます。この点はあなたの方が私よりずっと詳しいでしょうが、有名な画家が王侯貴族や権力者の肖像画をずいぶん描いています。
中には後世に伝わるような名画もあると思います。だから、平山画伯が竹下の肖像画を描いても、そう不思議ではないと思うのですが・・・(続く)
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続き (矢嶋武弘)
2020-01-15 10:44:08
実は平山画伯と竹下氏は、シルクロードなど中国の遺跡で結ばれています。
少し調べましたが、1988年(昭和63年)、当時の竹下総理大臣が敦煌などの中国の遺跡を訪問しました。その時、平山画伯が総理の「随行団」に加わっていたのです。
平山さんは敦煌などの遺跡にはもちろん詳しく、当然、総理たちにレクチャーをしたのでしょう。
また、竹下と平山さんの仲が良くなければ、随行団に加わる(入れる)などということはありえません。平山画伯が竹下総理に随行した時、私は「はは~ん、肖像画を描いた仲だもんな」と思いました。

以上、長くなりましたが、NHKのテレビ番組を観て、平山画伯は本当に素晴らしい人だと思いました。

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Unknown (おキヨ)
2020-01-15 12:51:17
そうでしたか!竹下さんと平山画伯のそのような過程を知らなければ、私などは平山画伯が政治家の肖像画を描くということはあり得ないと思ったのですが、シルクロードなど視察団として結ばれた仲なら平山画伯が肖像画竹下さんの肖像画を個人的に描いても不思議はありませんね。
もう一つは芸術家が個人的に絵筆をそそられる人物ならどのような立場の人間でも描くことがあると思います。たとえば吉田茂の様な人物とか・・・^^
偉人には面魂というのがありますからね、これが魅力的なのだと思われます。


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