<以下の記事は2002年7月3日に書いたもので、一部修正して復刻します。>
1) 私は別稿で「18歳以上を“成人”にせよ!」というのを書いたが、これは現代の日本の改革の中で、最も重要なものだと考えている。 インターネットで調べてみると、2年前の2000年の段階で、主に民主党や共産党が成人年齢の引き下げについて、実に前向きの素晴らしい見解を発表している。 それに対して、自民党は最も遅れた対応しかできず、極めて不熱心である。この点について、私は自民党に幻滅を覚え、日本の改革を担える政党ではないと思うようになった。
成人年齢の引き下げは民法、少年法、公職選挙法などに係わってくる重要な問題だが、数年前から、主に少年犯罪の凶悪化に伴って焦点となってきた。 少年法が一部改正されて、刑事罰の対象年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げることなどが実現したが、この程度の改正で少年の凶悪犯罪が激減するとは、ほとんどの人が思ってはいないだろう。
一方、選挙権の問題から、成人年齢を20歳から18歳以上に引き下げるべきだという議論も高まっている。 日本共産党の不破哲三委員長(当時)が2000年6月7日に発表したものによると、国立国会図書館の調査で、168カ国のうち146カ国が「18歳選挙権」を実施しており、日本は世界の大勢から大きく遅れていることが判明している。 また、サミット(先進国首脳会議)参加国では、日本を除いた全ての国が「18歳選挙権」を実施している。
ここで私は、少年法や選挙権の話をあまり掘り下げるつもりはない。別稿でも述べたように、私が強調したいのは、若者達が一日も早く“成人の意識”を持ってもらいたいということである。 一日も早く“自立心”を持ってもらうことは、日本国民にとってこの上もなく良いことだからだ。 「18歳以上に大人としての権利と責任を」と呼びかける民主党の提唱(2000年5月23日)は、誠に当を得ているものだ。
2) 未成年者(20歳未満)でも立派に職業を持ち、税金を納めている人は相当数いる。 何故この人達に選挙権を与えないのか! 20歳以上でも納税していないのに、選挙権を行使する人(学生達)が大勢いるというのに、こういう矛盾・不公平を国家、国民はどう考えるのか。
勿論、「選挙権なんか、クソ食らえ!」と思っている若者も多い。しかし、せめて18歳以上の納税者に対しては、国は選挙権を与えることが義務ではないのか。何故なら、国家とは税金で成り立っているからだ。場合によっては、16歳以上の納税者に選挙権を与えても良いくらいだ。 もし、国がそれらの若者にどうしても選挙権を与えたくないなら、20歳になるまで納税の義務を免除すべきである。
未成年者飲酒禁止法とか、未成年者喫煙禁止法というのがある。 しかし、イスラム世界でもあるまいし、今どき日本で、20歳以前に酒を少しも飲んだことがないという男子が、どれほどいるだろうか。 相当昔の若い頃、クソ真面目だった私でさえ、20歳以前にビールを少しは飲んだことがある。
私は、なにも若い頃から酒やタバコを嗜めと言っているのではない。 私の拙い経験などから言うと、若い頃クソ真面目だった男の方が、年を取ってから酒、タバコ、その他の遊びに“はまり込んでいる”のが多いから、指摘したまでだ。 要は適当な年齢から、いろいろな事をほどほどに経験した方が、割合早く「免疫」がついて良い場合が多いということである。
話が少しそれてしまったが、最近の若い人達は“年金”への関心が非常に薄れているという。自分達が年を取ったら、「年金制度」は崩壊しているのでは、と思っている若者が多いようだ。
国が「年金制度」を本当に維持したいと考えるなら、中学・高校時代からそのことを理解してもらうように、若者達の意識を高めることが必要である。 要は“意識”の問題だから、早めに選挙権を与え大人になってもらうのが良いだろう。
3) 少年犯罪でも、背景には早熟化と“甘え”の問題があるようだ。早熟化について言えば、今の若者は昔の我々に比べて、はるかに情報を多く持ち、また利口で、悪賢く狡猾になっている。これは世の中が複雑になってきたからだろうか。
その一方で、パラサイト・シングルではないが、身体が大きいわりには“甘え”の心理構造が目立つのだ。 昔は、子供から親への「仕送り」が当たり前だったが、今は親の方が年金制度で楽になったのか、いつまでも子供に「仕送り」をしているのが多い。働くのが嫌だとか、大人になりたくないという若者が増えている。
世の中が贅沢になり高学歴化してきた中で、“甘え”は益々広がっているようだ。 私は別稿で指摘したが、江戸時代以前は「元服」という立派な制度があったため、子供は嫌でも11歳から16歳の間に元服させられた。 これは成人になるということである。今の20歳に比べて、なんと早い成人式だったろうか。
従って、私は何度でも言う。 少年法がどうだとか、選挙権がどうだとか言う前に、一日でも早く自立心を持って、大人になって欲しいということだ。 大昔のように14~5歳で成人しろとは言わない。大昔の子供達よりは、肉体も知能もはるかに発達している現代の子供達が、20歳になるまで“のうのう”と未成年でいられるとは、一体どういうことだろうか。「甘えろ、もっと甘えろ」と言っているようなものではないか!
幸いにして日本には徴兵制がないから、我々もそうだったが、若者達は実に気楽で甘ったれで、優雅で伸び伸びしている。 それだからこそ、できるだけ早く若者達に自立心や、大人になる意識を持ってもらいたいのだ。要は“意識”の問題である。
こうした現代の若者の心理構造、自立心の欠如などを、自民党の指導者は分かっているのだろうか。 少年法の罰則を強化すればそれで良い、と考えているだけなら実にお粗末である。
いま、最も早く手を付けなくてはならない改革とは、成人年齢の18歳への引き下げである。 民主党や共産党は極めて前向きだというのに、政権与党である自民党の鈍感さは目を覆うものがある。こんな政党では、日本の改革は任せられない! 真の教育改革も、成人年齢を18歳に引き下げてから、初めて真剣に考えることができるのだ。 (2002年7月3日)