<土地に関する考察>
土地は国家の基本である。 国家とは領土つまり土地、国民、主権の3つの要素から成り立っているのだ。それほど、土地というのは重要なものであり、そんなことは説明するまでもないだろう。領海とか領空というのも、国土が基準になって派生するものだ。 われわれは地上で生活している。ごく一部の人間が海や空で生活しているだろうが、基本は地上で生きているのだ。
これほど単純な事実はないが、文明化した現代ではそういうことを忘れがちである。しかし、国土がなければ、われわれは“流浪の民”になってしまう。ジプシーと同じだ。それほど、土地は国家と切り離せないものである。
他方、国家とは税金で成り立っている。それは国家の機能的な側面を言うのだが、税金がなければ国家は機能しない。いくら領土と国民、主権があっても、税金がなければ国家や地方公共団体は活動できないのだ。 人間にたとえれば、国家や地方公共団体は「身体」であり、税金とはその中を流れる「血液」だろう。だから“血税”とも言うのか。
それはさておき、国家の要素に土地と国民があるなら、国家が活動するためには土地と国民に税金を課して良いのだ。だから、古代日本には租庸調(そようちょう)と言って、土地税と人頭税があった。しかし、現代ではそんな単純なものではない。古代と違って、経済活動がはるかに発達した現代では色々な税金がある。そういうことは、読者諸氏の方がずっとよく知っているはずだ。
私がここで言いたいのは、土地税(地価税)こそあらゆる税の中核でなければならないということだ。これは申し訳ないが、私の哲学であり信念なのだ。 土地とは何か。土地は国家の基本であるが、同時に人類共有、国民共有の財産だと思っている。 これを“土地神話”と批判する人がいるかもしれないが、私は、土地とはもともと天から人類に与えられたもので、最も尊いものだと思っている。
私は土地の私有を否定するものではない。しかし、もともとは公有のものであり、日本ではそれが天皇のもの、貴族のもの、武家階級のものになったりしてきた経緯がある。現代では土地の私有は当たり前かもしれないが、本来は誰のものでもなかったのだ。
私は土地を直ちに国有化せよと言っているのではない。日本は中国や北朝鮮のような社会主義国家ではない。 しかし、土地が国家の基本であるなら、大土地所有者には多くの課税を、また零細土地所有者にも課税すべきだと思っている。
もちろん、固定資産税や不動産取得税、都市計画税などがあるが、なんと、これらは全て「地方税」だ! 国税収入になっていない。国税には「地価税」というのがあるが、14年前から適用が停止されているのだ。これはバブル経済が崩壊して地価の高騰が収まったから停止になったというが、本来は国税の大きな柱になるはずである。
消費税を増税するぐらいなら、この地価税を復活せよと言いたい。大土地所有者はたっぷりと課税されるが、土地を持たない人は課税されないのだ! これは公正公平な税制である。消費税のような“逆進性”はないのだ。
土地は天から与えられたもの、もともと公有のものと考えれば、土地私有は認められない。 たとえ“私有”を認めるとしても、それは国家から「賃貸」したと考えるべきである。土地所有者は、国家に「賃貸料」を払うべきなのだ。それが土地に関する私の哲学である。
<土地税制について>
結論から言うと、私は「土地税制」を見直して、社会保障費の穴埋めにしたり財政赤字を減らすのが一番だと思っている。 実はこの件は、消費税増税に賛成する一部の人からも支持されているのだ。先ほども言ったが、土地税制には固定資産税、不動産取得税、都市計画税などがあるが、いずれも地方税である。
それならば、国税である地価税を復活させるなり、固定資産税などの一部国税化は考えられないのか。 税率をアップするかどうかは別にして、固定資産税だけで年間8兆7789億円、都市計画税は1兆2325億円だから、合わせて年に10兆円余りの税収になっている。(財務省の「土地税制に関する資料」・http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/land/index.htm) 要するに、消費税率の5%アップ分に近いものだ。
むろん、これは地方税だから全部を国税にするわけにはいかない。税率をアップした分だけを国税に入れるとか、先ほども言った地価税を復活させるなどすれば、相当の税収が見込める。 もちろん「土地税」の引き上げなどでいろいろな影響は出てくるが、消費税率アップの逆進性よりはマシだろう。評判の悪い消費税は引き下げるか、基本的に廃止すべきだ。
具体的なことは専門家を中心に考えてもらうとして、要は土地に関する考え方である。長くなるのでそろそろ止めるが、今後、土地の「国有化」を含めていろいろ議論できれば良いと考えている。(2012年1月15日)
<参考>
ジョージズム・・・http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%BA%E3%83%A0
土地税制については、考えさせられました。
今の日本経済は、土地を基本に成り立っていますので、
国有化は望ましくても、難しいと思います。
中国は、土地の私有を認めていないそうですが、
政治体制が改革されないと、恐ろしいと感じます。
これはあくまでも問題提起です。土地税制の見直しで景気が後退するようでは良くありません。
しかし、消費税アップの逆進性はもっと問題です。
要は「土地哲学」の問題に帰着しますが、土地は本来、公的なものと理解します。したがって、景気や経済が後退しないという条件で、土地税制を見直すことは良いと考えます。