2020年3月7日<4>
「あずさ3号」で南小谷に到着。ここから20年振りの大糸北線へ。
JR西日本車両の両脇にJR東日本の車両が並ぶ、なかなか珍しい光景。直江津が3セク化されて以降、在来線では「サンライズ」を除けば南小谷だけかも。
12時ちょうど発の普通糸魚川行き2両編成キハ120の車内は既に満員御礼の大盛況。なので発車ギリギリまでホームで過ごす。
その後もじゃんじゃん乗客が集って、これはダイヤ改正前に自分と同じ「あずさ3号」に乗りに来た人達なのか、いつもこうなのかはわからないけど、これだけの乗客がいれば心強く感じる。なにせこの大糸北線の輸送密度は全国的に見てもワーストに入る部類だし、一時期JR西日本の社長が廃止をほのめかしたことからも決して安泰とは言えない状況。
11時58分、発車時刻が迫り自分も乗車。なんとか外が見える位置に立つことができ、定刻12時ちょうどに南小谷を発車。
自分が初めて大糸北線に乗車したのは学生時代の1991年。当時所属していたサイクリングサークルに年1回、八王子-糸魚川間の約300kmを自転車レース形式で走るイベントがあり、八王子を午前8時頃出発、自分が糸魚川に着いたのが翌朝3時頃だったか。
そのまま輪行で始発の大糸北線→「あずさ」と乗り継ぎ東京の自宅へ戻ったのが最初の乗車。
クッタクタの極限疲労で、南小谷の乗り換え以外は糸魚川から八王子まで爆睡だったので、その時は大糸北線の記憶はあまり無し。
それよりも真夜中に通った、ひたすら洞門が続く国道148号の秘境っぷりに魅せられて、その後クルマと鉄道で再三この地を訪れるようになる。国道148号も凄かったけど、当時キハ52で運行されていたこの大糸北線の景色も凄かった。
普段は山あいの美しい川である姫川も、その本性は暴れ川。度々氾濫して流域に被害をもたらす。その為、姫川には至る所にこのような人口構造物があり過去の被害を物語る。
中土を過ぎると本格的に山深い景色。徐々にこの風景を思い出してきた。
大糸北線に最後に乗ったのは寝台特急「日本海」糸魚川-函館乗車で訪れた2000年の冬。「あずさ」→大糸線と乗り継いで来たものの、強風により途中の平岩だったか、突然抑止されてしまい「日本海」乗車が危ぶまれた。
幸い1時間程の抑止で運転再開し事なきを得たけど、あれが最初で最後の「日本海」乗車。北陸本線も強風で遅延となり、結局2時間遅れで函館に到着したような記憶がある。
あの時はまだ携帯電話持ってなかったから、写真を撮って記録に残すということはやってなかった。今思うと、写真撮っとけば良かったな思うけど。
列車は北小谷に到着。今も存在する重機が姫川の暴れん坊っぷりを物語る。
そして姫川を横断するように架かっているのが国道148号の旧道。今は縦に交差する新道が多くの区間をトンネルで突っ切って、走りやすくはなったけど何か新幹線のように味気無く感じてしまう。
まあ旧道の険しさはかなりのものだったから安全上止むを得ないけど、自分はあの旧道が好きだった。
深い谷の間を流れる姫川。今は水量が少なく暴れ川の面影は無いけど、やはりこの深い峡谷は天気一つで一変する緊張感を抱かずにはいられない。
長いトンネルを抜けて12時22分、列車は平岩に到着。長野との県境を超えてここは新潟県。20年前に抑止されたのが本当に平岩だったか?はっきり覚えてないけど、何か懐かしさを感じる。
ここ北小谷-平岩間には葛葉峠があり、かつての国道148号はこの峠を越える峠道となっていて、自転車レースでは最後の難関となっていたけど、今はここも新道に移行しトンネルで突っ切る形になっている。
しかしその峠道は旧道の形で残されているものの、1995年あの豪雨災害以降は長きに渡り通行止め。もう復旧されないのかと思っていたら実は数年前に復旧していたことをつい最近知り、大糸線にも乗りたいし148号も走りたいしで複雑な心境ながら、今回は大糸線をチョイス。
平岩を出て小滝までの区間が個人的には大糸北線のハイライト。姫川が織り成す峡谷美。雪があればいっそうの絶景だっただろうけど、記録的暖冬の今冬はちらほら見える程度。
この山間部の区間を列車は徐行で進む。度重なる水害の影響で地盤が緩いのか。
トンネルに入ると加速し出ると徐行を繰り返す。険しい自然条件の中を走る大糸北線。よくぞここに線路を引いてくれたと思う。
秘境風景の中をゆっくり進むキハ120。20年前は関西からのスキー列車「シュプール白馬・栂池」が冬季に運行されていて、キハ65やキハ181がこの大糸線で見られたし、定期の普通列車も「信濃大町・白馬-糸魚川」という列車が設定されていたりと、今思うと夢のような光景だった。
以前のJR西日本社長による廃止を示唆する発言後、地元の反発を呼んでからか、その後そのような動きは見られないし、むしろ「積極活用」なんて言葉も聞かれたけど、実際大糸北線に優等列車が設定されるような動きは無いし、残念ながら今のままではもうこの区間を優等列車やJR東日本からの直通列車が走ることは無いように思われる。
小滝を過ぎると徐々に山間部を抜けて平野部の車窓に変わり、ちらほらと民家も現れる。秘境好きの自分としてはちょっと寂しくなる瞬間。
国道148号を通っていてもいつも同じ感覚に陥る。根知・頸城大野と停車してもほぼ乗客が降りることは無く依然として満員御礼。
12時52分、糸魚川の一つ手前、姫川に到着。自分はここで下車。ドアは自動でも手動ボタンでも開かず、折戸を手で引いて開ける。んっ?という感じでちょっと戸惑った。
振り返ると北アルプスのきれいな山々。相変わらずの絶景っぷりと懐かしさで久々の大糸北線を満喫。
いったん下車して温泉に向かう。
姫川駅から歩いてすぐ、「フォッサマグナ糸魚川温泉 ひすいの湯」に到着。
ここに来るのも15年振りくらい。泉質がすごく良いのですっかりリピーターになったけど、来たい来たいと思いながら最近は来れずじまい。
フロントで料金900円を支払う。以前は1000円だったような気がするけど、なにせ15年振りなのではっきり覚えてない。そしてまずは食堂へ。
ちょっとお腹の不調が治まってきたのでさっそくビール。あ~美味い。そして山菜そばをオーダー。独特の太いそば。これも懐かしい。自分の定番はかき揚げそばだけど、お腹の不調による影響かまだ揚げ物が食べれず。
食後はそのまま大広間でゴロン。早起きしたからたちまち睡魔に襲われてそのままzzz…。
再び目覚めると時刻は15時20分。すっかり爆睡してしまった。ここで入浴へ。
浴室に入ると正露丸のような独特の温泉のいい匂いがする。洗いを済ませて露天風呂へ。「外気温が低いと湯温も低い」というような注意書きがある。以前は無かった気がするけど。
湯に浸かると確かにぬるめ。38℃くらいか。しかしこれくらいが自分には適温。あ~最高。しかもこの時間ほぼ貸し切り状態。
そして以前と変わらぬこの独特の湯。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉。源泉温度が100℃近くある高温泉で高張性。これほどの湯はなかなかお目にかかれない。個人的泉質ランキングTOP5に入るいい温泉。
循環してるようだけど、消毒用塩素臭などは全く無し。以前は露天ももっと高温だったような気がするけど、循環をやめて掛け流しに変わったとか?いずれにしてもいい温泉。糸魚川のきれいな山を眺めながら半永久的に入っていられそう。
しかし大糸線の時刻が迫ってきた為、泣く泣く上がる。80分コースで堪能させて頂いた。
<フォッサマグナ糸魚川温泉 ひすいの湯>★★★★★
泉質:S 眺め:A 癒し:A
料金は少々高めながら、それは問題にならないくらいの良い泉質。食堂・大広間や漫画コーナーもあり1日楽しめる。入浴料900円。シャンプー・ボディソープ備え付けあり。
姫川駅からも近く鉄道でもアクセス良好。ただし列車の本数は非常に少なく要注意(路線バスもあり)。
17時5分、温泉をあとにして姫川駅に向かう。
17時15分発の糸魚川行き到着。先ほどとは違い単行ながら乗客はまばら。やはりこれが大糸北線の厳しい現実か。
車両前方のロングシートに着席すると姫川を発車。
17時20分、終点糸魚川に到着。久々~。北陸新幹線が開通し北陸本線が3セク化されてからは初。
20年前、ここから寝台特急「日本海」に乗った時は多くの夜行列車が走っていたけど、今はゼロ。本当に日本の鉄道は味気なくなってしまった。
そして糸魚川駅は改札が高架化され以前とはずいぶん変わってるけど、大糸線発着ホームは昔のままのような気がする。
駅を出ると目の前に現れるのは本日のお宿「ホテル ジオパーク」。さっそくチェックイン。シングル1泊7000円。じゃらんでは扱いがなく、ホテル独自のサイトで予約。まだ新しいのか部屋も清潔感があって落ち着く。
一息ついたあとは海を見に行く。
徒歩5分程のところにある展望台に到着。お~日本海だ。今朝、太平洋間近の千葉を出てきて到達した日本海。自転車レースの時と似た実感が湧く。
残念ながら曇っていて夕日は拝めないけど、かすかに空が色づいている夕暮れの日本海。
それにしてもすごい数のテトラが入っている。今日は穏やかだけど、荒れる日本海を象徴する光景。
振り返ると、糸魚川の街のバックに聳える雪を頂いた山々。糸魚川は本当に景色がきれいな所。しかし昼間は暖かかったけど、さすがにちょっと寒くなってきた。
時刻は18時10分、ここでホテルに戻り夕食タイム。
ホテル1階に併設されている「寿司居酒屋 岬」さんへ。こちらで糸魚川の味覚を味わう。
まずはビール。かあ~美味い。しかしお腹がまだ絶好調には程遠いので控えめに飲む。
まずはイカ納豆。モチモチのイカとウズラの卵が絡む納豆。美味~い。これは家でもやってみたくなる。この味は再現できそうにないけど。
続いて北陸の名産、幻魚干し。幻魚は「げんげ」と読むことが多いようだけど、こちらの店では「げんぎょ」。
深海魚らしいちょっとグロテスクな姿ながら、味は濃厚で絶品。まさに海の恵みという感じ。初めて食べたけど、食べれて良かったと思える。
最後はアジのタタキ。見た目は普通のタタキだけど、こちらもモチモチ食感で本当に美味い。
しかし早くも満腹感。この1週間まともに食べれなかったから確実に胃が収縮しているようだ。頭ではもっと色々食べたいけど、お腹が不安なので満腹感に従いここでお勘定。糸魚川の味覚を堪能させて頂いた。
部屋に戻って時刻は20時。糸魚川駅の夜景を眺めてほろ酔いのままかなり早めの就寝。
20年振りの大糸北線と糸魚川はやっぱり最高だった。zzz…。