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いったい

2020-06-28 11:01:04 | メンタルヘルス
この本をどう評価すればいいのか? 黒川能 1964年黒川村の記憶 船曳由美著 集英社刊 2020年初版 3600円+税だから新本を買えば4千円近い普通のハードカバーである。船曳由美氏と言えば 62年、東京大学文学部卒で平凡社入社、雑誌『太陽』に創刊時から編集者として携わり、民俗、祭礼、伝統行事を取材。著書に『一〇〇年前の女の子』(本書とこれしかない生粋の編集者である)。素人のあたしが説明しようとしてもうまく書けないのでネットから資料を漁ってきたのでご了承いただきたい。56年前、日本中がアジア初の五輪開催に沸くとき、その熱狂に背を向け、雑誌『太陽』の駆け出し編集者が山形県庄内地方の黒川村(現鶴岡市)を訪ねた。そこで500年以上継承されてきた黒川能とその準備を行う村の暮らしを1年にわたり取材する。そして今、当時の記憶を一冊の本にまとめたもの。黒川能は、春日神社を鎮守とする村の暮らしに根差したお祭りです。旧正月の2月1日から2日にかけて行われる王祇(おうぎ)祭では、神社の御神体「王祇様」を上座と下座、2軒の「当屋(とうや)」へお迎えし。そこで夜を徹して能と狂言が演じられ、村人は能舞台を囲んでごちそうをいただく。こうして神と人がともに饗(きょう)することで、1年の恵みに感謝し、新年の五穀豊穣を祈念する。伝統芸能というより、共同体のための神事・・・なのだそうだ。つまるところ本書は最近取材されたものから書かれたものでなく 入社して2年目の新人編集者がグラビア誌太陽の取材のために1年かけて取材した記録から起こされた本である。従って読み始めると おおすごい まだこんな祭が日本に残っていたのか・・と思うのだが19章でその後の黒川が描かれる。黒川村 は平成の大合併で鶴岡市黒川地区になっちゃってるのである。この56年の間に古き良き(都会もんの幻想なのかもしれないが)日本の農村は消え農地の基盤整備で大型の農業機械が入るようになり村は一変する。既に当屋で行える状態ではないし有名になったことで観光客が押しかけ 結局大騒ぎになり 黒川能保存会なんて組織が大騒ぎをし 85年には春日神社境内に櫛引町郷土文化保存伝習館なるものができ 2003年には王祇会館ができ 村の祭りが解体されていくわけである。能装束や面は県や国の文化財となり500年営々と続いてきた神事としての黒川能は風前の灯である。若い人が都会に出ていき戻ってこないから伝承の輪が切れた状態で この先どうなるのかわからないが 少なくとも本書に書かれた黒川能は もはやほとんど失われた過去の亡霊でしかない。こうネタばらしをするのは良くない・・と思うが 昭和39年から40年にかけての古き良き日本の姿を再確認して 我々が失ったものの大きさに気が付く事も大事なことなので 本書は強くお薦めしたい。ネックになるのはこの価格である。部数が出ない・・と思われての値付けだろうがあと千円安ければ無理してでも即買うところだが 残念ながらしばらく様子見である。しかし 平凡社の雑誌の為の取材記録が集英社から出る・・というのもおかしなものだが それを許可した平凡社にも感謝したいものである。子供のころうちにも平凡社の百科事典はあった。度重なる引っ越しの足手まといになっていたのだがあたしが京都に出たあたりで処分したと思う。雑誌太陽の編集長にはあの嵐山光三郎もいた・・というのも今回知ったわけでただのおっさんではない・・と思ってたがいろんな人が関わって一つの時代を作っていたのだな・・と思う。ちなみに船曳由美氏のもう一冊の著作の100年前の女の子をポチったのは前に書いたが うちの図書館の蔵書にもあったので予約して確保されたので後で取ってくる。個人的な話で申し訳ないが あたしは速読である。にもかかわらず本書を読むのに4日かかってる。大体普通のハードカバーなら8時間で読んでしまう(並行して森見登美彦は3冊読んでるから遅いんだろう?とか言われそうだが)のだが 本書内容が濃すぎてついじっくり読んでしまうのだ。それでも一度読んだだけでは半分も頭に入ってない。返却期限が8日だから まだ2回くらいは読むのだろう。この値段だから買って・・とは言わないが図書館にはあるだろうから借りて一読されることを強くお薦めしたい。
コメント
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