ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『ハドソン川の奇跡』を観て

2016年10月06日 | 2010年代映画(外国)
イーストウッドの新作が上映されている。
題名は『ハドソン川の奇跡』(クリント・イーストウッド監督、2016年)。

2009年1月15日、極寒のニューヨーク。
160万人が暮らすマンハッタン上空850メートルで突如、航空機事故が発生。
全エンジンが完全停止し、制御不能となった旅客機が高速で墜落を始める。
サレンバーガー機長の必至の操縦により、70トンの機体は目の前を流れるハドソン川に着水。
“乗員乗客155名全員無事”という奇跡の生還を果たした。
着水後も、浸水する機内から乗客の避難を指揮した機長は、国民的英雄として称賛を浴びる。
だが、その裏側では、彼の判断を巡って、国家運輸安全委員会の厳しい追及が行われていた……。
(Movie Walkerより)

真実のドラマをクリント・イーストウッドが作る。興味深いのひと言。

ガンの大群によるエンジン停止。
208秒後の機長チェスリー“サリー”サレンバーガーの判断。
その判断は、単なる偶然か。
映画は、サリーが40年以上の経験による技術の、瞬間の判断力を示唆する。

しかし、国家運輸安全委員会は疑問の目を向ける。
本当に不時着以外の方法はなかったのか。
果たして両エンジンは完全に停止していたのか。
ラガーディア空港に引き返すのは不可能だったのか。
ニュージャージー・テターボロ空港に緊急着陸できなかったのか。
不時着は、乗員乗客を命の危険にさらす無謀な判断ではなかったか。

本当にサリーは英雄だったのか。
その国家運輸安全委員会の公聴会に対して、サリーは苦悶する。
トム・ハンクスが、そのサリーの心情を余すところなく伝える。
作品は、余計な枝葉をそぎ落とし核心だけを突いていく。

スリリングな場面といい、そのテーマ、内容といい、イーストウッドは高齢に達しているのに観客を満足させる作品を、
このように立て続けに発表する原動力がどこにあるのか、尊敬とともに不思議に思う。
コメント (2)
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