ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『幸せなひとりぼっち』を観て

2017年01月20日 | 2010年代映画(外国)
『幸せなひとりぼっち』(ハンネス・ホルム監督、2015年)を観た。

妻を亡くした独り者のオーヴェ、59歳。
かつて地区会長を務めたこともある彼は、頑固で偏屈なおじさん。
そして、近所の人々には規律の厳しい人間。
地域の治安を守るため、誰からも望まれていないのに、共同住宅地を監視し見回りをするのが日課。

ある日、オーヴェは43年間務めてきた鉄道局から、突然クビを宣告されてしまう。
家に帰った彼の脳裏によぎるのは、今は亡き妻の面影。
孤独に耐え切れなくなった彼は、自殺しようと自宅の天井にロープをかける。
しかしその時、隣りの家に引越してきたイラン人・パルヴァネ一家の騒がしい声がする。
その一家の車がオーヴェの家の郵便受けにぶつかって、自殺どころではなくなってしまう。
オーヴェは外へ飛び出すと、烈火のごとく怒り・・・

このイッコクな変わっているおじさんのオーヴェ。
普通、偏屈なおじさんがいたら、煙たくって近づくのも避けるのに、
ここに出て来る人たちは、不思議なことになんやかんやと相談や頼み事をしたりする。
特に、妊婦でもあるパルヴァネなんかは、オーヴェの偏屈さをものともせず、ドンドン依頼する。
オーヴェの方も、無愛想に、ぶつぶつ文句を言いながらそれでも対応し、観ていてその姿に、こちらまで和んできたりする。
その、律儀というか人の良さが表れた、このギャップがまた微笑ましい。

オーヴェは何度も自殺したがる。
亡き妻・ソーニャの元に行きたくって仕様がないのだ。
しかし、何かと邪魔が入ったりして、ちっとも死なしてもらえない。
そこが何ともいえず、可笑しかったりする。

若い頃の、ソーニャとの出会い、その後の結婚。
人を好きになり愛することの、エピソードがとってもいい。
オーヴェって、こんなに不器用でも、根は正直者で、正義感が強いのだ。
この人って本当にいい人だなと、観ていて、いつしか心が温まってくる。

ラストの、オーヴェの笑顔。
この笑顔が人生のすべてを語っていて、良かったねオーヴェ、と拍手を送りたくなる。
そんな、ほのぼのとした心持ちにさせてくれる、とってもいい映画だった。
コメント (4)
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