ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『読まれなかった小説』を観て

2019年12月21日 | 2010年代映画(外国)
あの『雪の轍』(2014年)のヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作品ということで興味が湧き、最新作の『読まれなかった小説』(2018年)を観てきた。

トルコ北西部のチャナカレ県。
大学を卒業したシナンは、故郷の町チャンへ重い足取りで戻ってきた。

シナンの父イドリスは、小学校の教師をしていて定年を迎えようとしている。
だが、ギャンブル好きの彼は胴元の店に入り浸って競馬に負けてばかりで、暮らしは困窮している。
妻アスマンはそんなイドリスの退職金を当てにしているが、とうとう家の電気を止められてしまって・・・

家に帰ってきたシナンは、これからの生き方についてこれといった目標が定まっている訳ではない。
言えるのは、この小さな町で平凡に生きることだけは受け入れられないということ。
だから気の進まない教員試験を受けるが、合格のめども立たず、残るは兵役かといったところである。

そんなシナンだが、作家になりたいと夢みている。
シナンは、町長とか町の経営者を訪ね出版費用を相談をするが、いい返事をもらえない。

父親のイドリスは、大地を緑化しようと井戸を掘ったりしていて、生き物との共生を夢みているが、
子のシナンにまでも競馬のための小銭をせびろうとし、だからシナンは父親が受け入れられない。

そんなでもやっと、この地方に住んでいる人々の暮らしについて書いてきた「野生の梨の木」と言う名の小説が本となり、母アスマンは大喜びする。
だが、店頭に置いてあった小説は一冊も売れず、読んでくれたのも、一人を除いたほかはいなかった。

と、このような内容だが、作品の筋は一義的ではなく、あらすじを単純化するのは難しい。
高校で同級の女生徒だったハティジュとシナンの、田舎風景の中でのやり取りが印象的だったり、
地元の著名な作家スレイマンに原稿を読んでもらう目的だったシナンが、自分の意見を一方的に論争のように述べたりする場面があったりする。
また、シナンと伝道師二人が、歩きながら宗教的な考え方を饒舌にふるったりする長いシーンがある。
そうかと思えば、現実から離れた印象的な場面が挿入されたりしてハッとする。

ただ、3時間超の長尺映画となると少々きつく、同じ3時間超でも『雪の轍』の時は、どっぷりとその作品に浸かれたのに、今回は疲れた。
もっとはっきり言えば、論争のような場面はすべてカットして、セリフもドンドン捨ててくれて2時間ほどの映画にしてもらえると、もっと感動できたと思う。
と言っても、映像や登場人物が物語にしっかりと溶け込んでいて、ラストシーンも印象的なので、これはこれで捨てがたかったりする。
コメント
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