六 紅鶏頭 黄鶏頭 紅葉鶏頭 黄葉鶏頭│「四季の花」秋之部・壹, 芸艸堂, 明治41年
「鷄冠花」はヒユ科、ケイトウ属の一年草ケイトウ、学名Celosia cristata L.の鶏冠状の花穂から得られる生薬である。収渋薬に属し、薬性は甘、渋、凉、帰経は肝経、大腸経で、効能は収斂止血、渋腸止痢、固渋止帯(収斂と清熱に働き各種の出血、下痢、帯下を止める。)である。ケイトウの種子から得られる生薬名は「鶏冠子」で、薬性は甘、凉、帰経は肝経、大腸経で、効能は凉血止血、清肝明目(血熱を冷まし止血する。肝経の熱を冷まして目を明瞭にする。)である。万葉集で詠われた「韓藍」(からあゐ)は大陸渡来のケイトウの古名である。
山辺宿禰赤人が歌一首
我がやどに 韓藍蒔き生(お)ほし 枯れぬれど 懲りずてまたも 蒔かむとぞ思う
「萬葉集」巻第三・384
秋さらば 移しもせむと 我が蒔きし 韓藍の花を 誰れか摘みけむ
「萬葉集」巻第七・1362
恋ふる日の 日(け)長くしあれば 我が園の韓藍の花の 色に出にけり
「萬葉集」巻第十・2278
隠(こも)りには 恋ひて死ぬとも み園生(ふ)の 韓藍の花の 色に出でめやも
「萬葉集」巻第十一・2784