万葉短歌-悠山人編

万葉短歌…万葉集全4516歌(長短)のうち、短歌をすべてJPG&TXTで紹介する。→日本初!

万葉短歌4036 いかにある3746

2021年07月16日 | 万葉短歌

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万葉短歌4036 いかにある3746

いかにある 布勢の浦ぞも ここだくに
君が見せむと 我れを留むる  田辺福麻呂

3746     万葉短歌4036 ShuI372 2021-0716-man4036

□いかにある ふせのうらぞも ここだくに
  きみがみせむと われをとどむる
○田辺福麻呂(たなべの さきまろ)=06-1048歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第5首。題詞(要旨)に、布勢(ふせ)の水海(みづうみ)に遊覧せむと期(ねが)ひて作る歌(4043までの8首)、左注に、「右一首田辺史福麻呂」。
【訓注】布勢の浦(ふせのうら=布勢能宇良)[3992歌注参照]。ぞも(曽毛)[「疑問的詠嘆」]。ここだくに(許己太久尓)[「こんなにもはなはだしく」]。君(きみ=吉民)。我れ(われ=和礼)。


万葉短歌4035 ほととぎす3745

2021年07月15日 | 万葉短歌

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万葉短歌4035 ほととぎす3745

ほととぎす いとふ時なし あやめぐさ
かづらにせむ日 こゆ鳴き渡れ  田辺福麻呂

3745     万葉短歌4035 ShuI360 2021-0715-man4035

□ほととぎす いとふときなし あやめぐさ
  かづらにせむひ こゆなきわたれ
○田辺福麻呂(たなべの さきまろ)=06-1048歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第4首。左注に、「右四首田辺史福麻呂」。
【訓注】ほととぎす(保等登芸須)。あやめぐさ(安夜売具左)[「菖蒲。・・・邪気を払う呪物・・・」。用字は、ほかに<菖蒲> など]。かづらにせむ日(かづらにせむひ=加豆良尓勢武日)[「端午の節句五月五日・・・。・・・菖蒲を橘の花などとともに紐に通して縵〔(<鬘(かづら)>か-編者)〕にすること。時鳥との取り合わせの景物とされた」]。こゆ(許由)[ここから]。


万葉短歌4034 奈呉の海に3744

2021年07月14日 | 万葉短歌

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万葉短歌4034 奈呉の海に3744

奈呉の海に 潮の早干ば あさりしに
出でむと鶴は 今ぞ鳴くなる  田辺福麻呂

3744     万葉短歌4034 ShuI360 2021-0714-man4034

□なごのうみに しほのはやひば あさりしに
  いでむとたづは いまぞなくなる
○田辺福麻呂(たなべの さきまろ)=06-1048歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第3首。
【訓注】奈呉(なご)。海(うみ=宇美)。潮(しほ=之保)。鶴(たづ=多豆)。


万葉短歌4033 波立てば3743

2021年07月13日 | 万葉短歌

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万葉短歌4033 波立てば3743

波立てば 奈呉の浦みに 寄る貝の
間なき恋にぞ 年は経にける  田辺福麻呂

3743     万葉短歌4033 ShuI360 2021-0713-man4033

□なみたてば なごのうらみに よるかひの
  まなきこひにぞ としはへにける
○田辺福麻呂(たなべの さきまろ)=06-1048歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第2首。
【訓注】波(なみ=奈美)。奈呉(なご)。貝(かひ=可比)。恋(こひ=孤悲)[「恋とは好きな人と離れて孤(ひと)り悲(かな)しむものとする考えを投影する表記。この表記は・・・集中20例ばかり」。01-0067孤悲而死万思(こひてしなまし)、以下、18-4083都祢乃孤悲(つねのこひ)、まで30例(編者調べ)]。年(とし=等之)。


万葉短歌4032 奈呉の海に3742

2021年07月12日 | 万葉短歌

***** 万葉集 巻18(4032~4138、百七首) 始 *****

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万葉短歌4032 奈呉の海に3742

奈呉の海に 舟しまし貸せ 沖に出でて
波立ち来やと 見て帰り来む  田辺福麻呂

3742     万葉短歌4032 ShuI360 2021-0712-man4032

□なごのうみに ふねしましかせ おきにいでて
  なみだちくやと みてかへりこむ
○田辺福麻呂(たなべの さきまろ)=06-1048歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第1首。題詞(要旨)に、天平20年3月23日、家持の館で左大臣使者田辺史(ふひと)福麻呂への宴を催して、心緒(おもひ)を述べる[下記注]。4035 左注参照。
【訓注】奈呉の海(なごのうみ=奈呉乃宇美)。舟(ふね=布祢)。しまし(之麻志)[<暫し>(『詳説古語辞典』)]。沖(おき=於伎)。波(なみ=奈美)。来や(くや=久夜)。
【依拠本注-題詞】(要旨)この題詞は、当面の巻頭4歌だけでなく、4065までの総題をも兼ねる。天平20年3月23日は、太陽暦748年4月25日ごろ。家持31歳。


万葉短歌4031 中臣の3741

2021年07月11日 | 万葉短歌

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万葉短歌4031 中臣の3741

中臣の 太祝詞言 言ひ祓へ
贖ふ命も 誰がために汝れ  大伴家持

3741     万葉短歌4031 ShuI354 2021-0711-man4031

□なかとみの ふとのりとごと いひはらへ
  あかふいのちも たがためになれ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第142首。題詞に、「造酒(ざうしゅの)歌一首」。左注に、「右大伴宿祢家持作之」。
【訓注】中臣の 太祝詞言(なかとみの ふとのりとごと=奈加等美乃 敷刀能里等其等)[「中臣氏が管理しているめでたい祝詞の言葉。<太>は壮大」]。言ひ祓へ(いひはらへ=伊比波良倍)[「神に祈って害悪を除く、罪・穢れ・禍などを除いて身を清める」]。贖ふ(あかふ=安加布)[「金品を代償として禍を免れること」。12-3201贖命者(あかふいのちは)、など]。命(いのち=伊能知)。誰がために汝れ(たがためになれ=多我多米尓奈礼)[「<誰がためにかあらむ、汝れがためにこそあれ>」]。

***** 万葉集 巻17(3890~4031、百四十二首) 終 *****


万葉短歌4030 うぐひすは3740

2021年07月10日 | 万葉短歌

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万葉短歌4030 うぐひすは3740

うぐひすは 今は鳴かむと 片待てば
霞たなびき 月は経につつ  大伴家持

3740     万葉短歌4030 ShuI352 2021-0710-man4030

□うぐひすは いまはなかむと かたまてば
  かすみたなびき つきはへにつつ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第141首。題詞に、「怨鸎晩哢(うぐひすの おそくなくことを うらむる)歌一首」。
【訓注】うぐひす(宇具比須)[集中の出現は51か所]。片待てば(かたまてば=可多麻氐婆)[「心を片寄らせて待つ、ひたすらに待つ」]。霞(かすみ=可須美)。


万葉短歌4029 珠洲の海に3739

2021年07月09日 | 万葉短歌

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万葉短歌4029 珠洲の海に3739

珠洲の海に 朝開きして 漕ぎ来れば
長浜の浦に 月照りにけり  大伴家持

3739     万葉短歌4029 ShuI347 2021-0709-man4029

□すすのうみに あさびらきして こぎくれば
  ながはまのうらに つきてりにけり
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第140首。題詞に、「従珠洲郡(すすのこほり より)発船(ふねをいたし)還太沼郡(下記注)之時泊長浜湾(ながはまのうらに)仰見月光作歌一首」。
【訓注】珠洲の海(すすのうみ=珠洲能宇美)[「能登半島の先端・・・。珠洲(すず)市・・・」]。長浜の浦(ながはまのうら=奈我波麻能宇良)[「氷見市の<麻都太江の長浜>(3991)と見られる」。17-3991(長歌)麻都太要能 奈我波麻(松田江〔まつだえ〕の 長浜)]。
【依拠本注-太沼郡】もと「於治部」とあったものの誤伝で、「治部ニ」と訓むべく、「治部」は国府の意と思われる。〔編者:依拠本注はさらに詳細に論拠を示す。〕


万葉短歌4028 妹に逢はず3738

2021年07月08日 | 万葉短歌

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万葉短歌4028 妹に逢はず3738

妹に逢はず 久しくなりぬ 饒石川
清き瀬ごとに 水占延へてな  大伴家持

3738     万葉短歌4028 ShuI344 2021-0708-man4028

□いもにあはず ひさしくなりぬ にぎしがは
  きよきせごとに みなうらはへてな
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第139首。題詞に、「鳳至郡(ふげしのこほりにして)渡饒石河(にぎしのかはを)之時作歌一首」。
【訓注】饒石川(にぎしがは=尓芸之河)[「今の仁岸側。〔旧・石川県鳳珠郡(ほうすぐん)、現・輪島市〕門前町〔もんぜんまち〕の剣地(つるぎじ)で日本海に注ぐ」]。水占延へてな(みなうらはへてな=美奈宇良波倍弖奈)[「<水占>は集中ここのみ。・・・縄の流れ方による占いか」]。鳳至郡[「能登半島北部の郡」。珠洲郡と合併して、現在は穴水町(あなみずまち)・能登町(のとちょう)で鳳珠郡をなす。下記注]。
【編者注-鳳】訓読は、<ふげ> <おおとり>。(『ウィクショナリー 日本語版』) 依拠本注(他書引用)は、日本語 fuge にあてて、鳳至を「ふげし」と訓じたとする。なお現代中国語では feng4。


万葉短歌4027 香島より3737

2021年07月07日 | 万葉短歌

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万葉短歌4027 香島より3737

香島より 熊来をさして 漕ぐ舟の
楫取る間なく 都し思ほゆ  大伴家持

3737     万葉短歌4027 ShuI341 2021-0707-man4027

□かしまより くまきをさして こぐふねの
  かぢとるまなく みやこしおもほゆ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第138首。題詞に、「能登郡従香島津発船(かしまのつより ふねをいたし)射熊来村(くまきのむらを さして)徃時作歌二首」。その第2首。4026 は旋頭歌。
【訓注】香島(かしま)[旧・石川県鹿島郡石崎村香島、現・石川県七尾市石崎町香島]。熊来(くまき=久麻吉)[旧・石川県鹿島郡熊来村、現・石川県七尾市中島町]。都(みやこ=京師)。


万葉短歌4025 志雄道から3736

2021年07月06日 | 万葉短歌

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万葉短歌4025 志雄道から3736

志雄道から 直越え来れば 羽咋の海
朝なぎしたり 舟楫もがも  大伴家持

3736     万葉短歌4025 ShuI339 2021-0706-man4025

□しをぢから ただこえくれば はくひのうみ
  あさなぎしたり ふなかぢもがも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第136首。題詞に、「赴参気太神宮(けだのかむみやに おもぶきまゐり)行海辺之時作歌一首」。
【訓注】志雄道(しをぢ=之乎路)[「氷見市からは、西へ国境臼ヶ峠を越えて、小久米・三尾・走人・向瀬・石坂を辿って志雄へ出る道という」]。羽咋(はくひ=波久比)。朝なぎ(あさなぎ=安佐奈芸)。気太神宮[「石川県羽咋市にある神社。祭神大国主命」]。


万葉短歌4024 立山の3735

2021年07月05日 | 万葉短歌

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万葉短歌4024 立山の3735

立山の 雪し来らしも 延槻の
川の渡り瀬 鐙漬かすも  大伴家持

3735     万葉短歌4024 ShuI338 2021-0705-man4024

□たちやまの ゆきしくらしも はひつきの
  かはのわたりぜ あぶみつかすも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第135首。題詞に、「新川郡(にひかはの こほりにして)渡延槻河(はひつきの かはをわたる)時作歌一首」。
【訓注】立山(たちやま=多知夜麻)。雪(ゆき=由吉)。延槻の 川(はひつきのかは=波比都奇能 可波)[「早月(はやつき)川。立山の一峰、剣岳(つるぎだけ)から北西に流れて、富山湾に注ぐ」]。


万葉短歌4023 婦負川の3734

2021年07月04日 | 万葉短歌

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万葉短歌4023 婦負川の3734

婦負川の 早き瀬ごとに 篝さし
八十伴の男は 鵜川立ちけり  大伴家持

3734     万葉短歌4023 ShuI335 2021-0704-man4023

□めひがはの はやきせごとに かがりさし
  やそとものをは うかはたちけり
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第134首。題詞に、「見潜鸕(うを かづくる)人作歌一首」。
【訓注】篝(かがり=可我里)。八十伴の男(やそとものを=夜蘇登毛乃乎)[「朝廷の官人たち・・・」。03-0478(長歌)物乃負能 八十伴男乎(もののふの やそとものをを)、04-0543(長歌)物部乃 八十伴雄与(もののふの やそともをと)、など集中に12か所]。鵜川立ち(うかはたち=宇加波多知)[「鵜飼…慣用句」。01-0038(長歌)鵜川乎立(うかはをたち)、17-3991(長歌)宇加波多知(うかはたち)、など5か所]。


万葉短歌4022 鸕坂川3733

2021年07月03日 | 万葉短歌

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万葉短歌4022 鸕坂川3733

鸕坂川 渡る瀬多み この我が馬の
足掻きの水に 衣濡れにけり  大伴家持

3733     万葉短歌4022 ShuI335 2021-0703-man4022

□うさかがは わたるせおほみ このあがまの
  あがきのみづに きぬぬれにけり
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第133首。題詞に、「婦負郡渡鸕坂河辺時作一首」。
【訓注】鸕坂川(うさかがは=宇佐可河泊)[「神通川が、富山県婦負(ねい)郡婦中(ふちゅう)町鸕坂〔現・富山市婦中町鵜坂(ふちゅうまち うさか)〕の東を流れるあたりの名であろう」。下記注]。我が馬(あがま=安我馬)。足掻きの水(あがきのみづ=安我枳乃美豆)。衣(きぬ=伎奴)。
【編者注-鸕】部首=鳥、画数=27、音読み=ロ、意味=「鸕鶿(ろし)」は、鳥の名。鵜(う)。(『漢字辞典ONLINE』) 訓読み=あたま・かしら、ピンイン=lu2。(『漢字辞典』) 鸕鷀(読み)ろじ。(平凡社『世界大百科事典』) 「鸕」の代替漢字は「鵜」とする。


万葉短歌4021 雄神川3732

2021年07月02日 | 万葉短歌

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万葉短歌4021 雄神川3732

雄神川 紅にほふ 娘子らし
葦付取ると 瀬に立たすらし  大伴家持

3732     万葉短歌4021 ShuI330 2021-0702-man4021

□をかみがは くれなゐにほふ をとめらし
  あしつきとると せにたたすらし
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。以下9首、原文に作者名はない。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第132首。第4句割注に、「水松(みる)之類」。
【訓注】雄神川(をかみがは=乎加未河泊)[「岐阜県に発して砺波平野を流れる庄(しょう)川の、庄川町〔現・砺波市庄川町〕付近での古名」]。紅にほふ(くれなゐにほふ=久礼奈為尓保布)。娘子(をとめ=乎等売)。葦付(あしつき)[「念珠藻科の淡水藻類あしつきのりという。かわもずくとする説も・・・」]。
【類想歌】07-1218  黒牛の海 紅にほふ ももしきの 大宮人し あさりすらしも  藤原房前
09-1672  黒牛潟 潮干の浦を 紅の 玉裳裾引き 行くは誰が妻  作者未詳