少しずつ譜面が読めるようになり、少しずつ曲っぽいものが弾けるようになってきた頃...まず憧れた曲は、ベートーベンのエリーゼのためにでした
この曲については、今でも忘れられない思い出があるのです---
とある日のレッスン---
私は思い切って先生にこう切り出しました
「先生、『エリーゼのために』の楽譜、持ってますかぁ~?」
先生は、すぐに探して見せてくれました
憧れの楽譜とはどんなものかと、かなり美化してワクワクしていたのですが、
先生のものは、とても古くて、なんだか「エリーゼのために」に似つかわしくないなぁ~と思ったものでした
でも、それを実際手にとって開いてみると、やはり感動...
そして、想像以上の楽譜の複雑さに思わず固まってしまったのでした
「まだ弾くには難しいと思うけど....」
先生はそう言いながらも、じっと楽譜を見つめたまま動かない私からテレパシーを感じてしまったのでしょう
「すぐに返す、汚したりしない」という約束で、それを貸して下さったのです
先生の言うとおり、それは当時の私にとってすぐに弾ける曲ではありませんでした
でも、「いつか弾けるようになりたい、練習したい、この楽譜が欲しい~!」と思った私は、なんと
それを写譜し始めたのでした
当時、父が職場で発生する裏紙を持ち帰り、子供たちの落書き用にまとめてくれていたのですが、それが、サイズ(A4)としてもぴったりでした
(よし!これで作ろう!)
まずはご丁寧に表紙から...
次に、ボールペンと定規を使って5線紙を作り、そこに鉛筆で譜面を写していく....
書いては消し、消しては書き....少しずつ出来上がっていく楽譜にワクワクしながらも、それは、思った以上に大変な作業
でした---
必要なものをいかに工夫して代用するかという時代だったなぁと思います
今でこそ、A4サイズの5線紙も、コピーという手も当たり前の事に感じますけれど...
翌週のレッスン---
「先生、『エリーゼのために』の楽譜、もうちょっとだけ貸して下さい!」
不思議そうな顔をする先生に、私は未完成の譜面を見せて説明しました
「まぁ!!これを書いたの?
ちょっと、この子ったら...(なんて子なの?!)」
そして、ぽかんとする私に向かって、諭すようにこう言われたのでした
「そんなに貸して欲しいって言われたら、先生だって貸したくなる。でもね、貸してあげられない。これを書くの、ものすごく大変だったでしょ?時間がたくさんかかったでしょ?今度から欲しい楽譜があったらお母さんに言ってごらん。お母さんにお願いしたら、きっと買ってくれるよ。いいわね?それにしても、先生、本当にびっくりしちゃった。まさかこんな事するなんて思わないもの...よく頑張って書いたのねぇ....
」
目の前のレッスンをおろそかにし、こういう事で練習時間を削ってほしくないという思いと、純粋な子供の思いがけない行動に思わず熱いものを感じてくれた気持ちが入り混じったような言葉だったのでしょうか...かすかに目を潤ませながら、私が一生懸命に書いた譜面を手にしてこう言って下さった先生のコトを25年経った今でも忘れられないのです
やがて手書きのエリーゼのためには、未完成のままその姿を消してしまったのですが、母に買ってもらったエリーゼのためには、今でも私の手元に残っています
すっかり全体が薄茶に日焼けしたその楽譜は、まさにあの時先生にお借りしたものと同じような姿をしており、それを見るたび、ちょっとホロッときてしまうのです
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この曲については、今でも忘れられない思い出があるのです---
とある日のレッスン---
私は思い切って先生にこう切り出しました
「先生、『エリーゼのために』の楽譜、持ってますかぁ~?」
先生は、すぐに探して見せてくれました
憧れの楽譜とはどんなものかと、かなり美化してワクワクしていたのですが、
先生のものは、とても古くて、なんだか「エリーゼのために」に似つかわしくないなぁ~と思ったものでした
でも、それを実際手にとって開いてみると、やはり感動...
そして、想像以上の楽譜の複雑さに思わず固まってしまったのでした
「まだ弾くには難しいと思うけど....」
先生はそう言いながらも、じっと楽譜を見つめたまま動かない私からテレパシーを感じてしまったのでしょう
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「すぐに返す、汚したりしない」という約束で、それを貸して下さったのです
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先生の言うとおり、それは当時の私にとってすぐに弾ける曲ではありませんでした
でも、「いつか弾けるようになりたい、練習したい、この楽譜が欲しい~!」と思った私は、なんと
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当時、父が職場で発生する裏紙を持ち帰り、子供たちの落書き用にまとめてくれていたのですが、それが、サイズ(A4)としてもぴったりでした
(よし!これで作ろう!)
まずはご丁寧に表紙から...
次に、ボールペンと定規を使って5線紙を作り、そこに鉛筆で譜面を写していく....
書いては消し、消しては書き....少しずつ出来上がっていく楽譜にワクワクしながらも、それは、思った以上に大変な作業
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必要なものをいかに工夫して代用するかという時代だったなぁと思います
今でこそ、A4サイズの5線紙も、コピーという手も当たり前の事に感じますけれど...
翌週のレッスン---
「先生、『エリーゼのために』の楽譜、もうちょっとだけ貸して下さい!」
不思議そうな顔をする先生に、私は未完成の譜面を見せて説明しました
「まぁ!!これを書いたの?
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そして、ぽかんとする私に向かって、諭すようにこう言われたのでした
「そんなに貸して欲しいって言われたら、先生だって貸したくなる。でもね、貸してあげられない。これを書くの、ものすごく大変だったでしょ?時間がたくさんかかったでしょ?今度から欲しい楽譜があったらお母さんに言ってごらん。お母さんにお願いしたら、きっと買ってくれるよ。いいわね?それにしても、先生、本当にびっくりしちゃった。まさかこんな事するなんて思わないもの...よく頑張って書いたのねぇ....
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目の前のレッスンをおろそかにし、こういう事で練習時間を削ってほしくないという思いと、純粋な子供の思いがけない行動に思わず熱いものを感じてくれた気持ちが入り混じったような言葉だったのでしょうか...かすかに目を潤ませながら、私が一生懸命に書いた譜面を手にしてこう言って下さった先生のコトを25年経った今でも忘れられないのです
やがて手書きのエリーゼのためには、未完成のままその姿を消してしまったのですが、母に買ってもらったエリーゼのためには、今でも私の手元に残っています
すっかり全体が薄茶に日焼けしたその楽譜は、まさにあの時先生にお借りしたものと同じような姿をしており、それを見るたび、ちょっとホロッときてしまうのです