「――大変です、又三郎殿。青騎士が、町の入口にやって来ました。しかも、五体です」
緊張でうまく息ができないのか、兵士は肩で息をしながら言った。
「そんなことが――」と、又三郎は立ちあがって言った。「町の前で倒してから、一日も経たずに復活してくるなんて、どういうことなんだ」
ジロー達も立ちあがったが、出入り口のドアに向かった又三郎は、城の兵士に迷い人を守るよう指示すると、ジロー達を振り向いて言った。
「あなた達は危険だ。ここを動かない方がいい」
しかし、ジローもグレイも、放ってはおけなかった。又三郎の後を追いかけるようにジローが部屋を出て行くと、グレイも寝ているサオリを起こしてマコトに預け、飛びあがったアオと一緒に、部屋を飛び出して行った。
「青騎士が、五体もいっぺんに現れるなんて」
と、詰め所の外に出た又三郎は、目を疑うように言った。
又三郎の視線の先、町の入口の方から、ガシャン、ガシャン――という耳障りな金属音が、いくつも重なり合って聞こえてきた。
すっかり暗くなった夜空の下、わずかな明かりをその鎧に反射させ、一体、また一体と、ゆっくりとした速度で、五体の青騎士がこちらに向かってきていた。
青騎士の復活はまだ先だと踏んでいたため、城の応援は、又三郎と一緒にやって来た兵士一人だけだった。
又三郎の経験上、青騎士の復活は、力が強くなればなるほど、早さを増していった。
一日と経たずに復活してきた青騎士は、どのくらい強さを増しているのか。いろいろな要素を考え合わせなければ、容易に想像できるものではなかった。
「あんた達の話しを聞いたが」
と、又三郎の横に立ったジローは言った。「迷い人一人に青騎士一体が出てくるなら、普通のことじゃないのか」
「ぼくもそう思う」と、ジローの後を追いかけてきたグレイは言った。「ぼく達を狙うなら、そのくらいの数は必要だと思ったんじゃない」
――バササッ。と、力強く羽ばたいたアオは、黙ってジローの肩に止まっていた。
「しかたのない人達ですね……」と、又三郎はため息をついた。「私が言っていたのは、一体でも手に負えなくなるのに、五体も相手にしなければならないということは、どれほどの痛手を被るか、想像もできないということです」
「――」と、ジロー達はうなずいた。
「復活してきた青騎士は、あなた達が戦った青騎士とは、違った青騎士になっているはずです」と、又三郎はしゃがみながら言うと、なにやら地面に手を当て、落とし物を探るように擦りつけた。「――誰も怪我することなく、城に連れ帰るのが私の仕事です。決して、無理と油断はしないでください」