「ううん」と、小さくすすり上げながら、サオリは言った。「青騎士が来るの。私の所に、来るの」
「大丈夫だよ」と、ジローは励ますように言った。「城の兵隊さん達が、みんなで沙織を守ってくれてるんだから」
しかしサオリは、いやいやと首を振ると、悲しそうに繰り返した。
「――青騎士が来るの。沙織を呼んでるの。すぐに行くから、待っていろって言ってるの」
どうやって元気づければいいのか、ジローもグレイも、アオもどうしていいかわからなかった。
と、大広間の外から、ズシンという音と、足元をくすぐるような振動が伝わってきた。
ジロー達を始め、パフル大臣も、料理を振る舞ってくれた給仕達も、はっとして大広間の出入り口に顔を向けた。
「どうした」「なんだ」「今のなに?」と、独り言のようにも聞こえる声が、大広間にこだました。
「なにごとだ――」
と、パフル大臣はジロー達を落ち着かせるように、座っているよう促す仕草をしながら、立ちあがって言った。「この音はなんだ。どうしたんじゃ」
大広間にいた城の兵士達が、出入り口に向かう大臣にあわてて追いつき、「落ち着いてください」と、言いながら、大臣を引き戻して席に座らせようとした。
「――誰でもよい。どうしたのか、外の様子を見てくるのじゃ」と、無理矢理席に戻された大臣は、周りの兵士に怒ったように言った。
兵士の何人かが「わかりました」と、出入り口のドアに駆け足で向かうと、ちょうど外からドアが開き、大臣に報告をするため、城の兵士がやって来た。
「パフル大臣――」
と、息を切らせた兵士が、心配そうにしている大臣に言った。
「青騎士達が、城壁の前で暴れています」
「なんじゃと」と、言ったパフル大臣は立ちあがったが、今度は誰も止めようとはしなかった。「わし達はよい。外の兵士達の応援に向かうのじゃ」
「――はっ」と、短く言った兵士達は、小さく敬礼をすると、我先にと競うように大広間を出て行った。
大広間が、急にがらんとしてしまった。息の詰まるような緊張が、充ち満ちていた。こうなると、もう誰も、食事に手をつけようとはしなかった。
「本当に、大丈夫だろうか――」