14 現れた扉
「こんな夜中に、騒々しいったらありゃしない。どうしたっていうの……」
と、両手で耳を覆ったアレッタは、眠い目をしばたたかせながら、ベッドから体を起こした。
アレッタの作った扉達が、まだ日も昇らないうちから、ざわざわと騒々しくささやき合っていた。
「――いったい、なにがあったの」と、手近な服に着替えたアレッタは、寝室から勢いよく出てくると、言った。
「おはよう、こんばんはです。魔女の扉様」と、パジャマのまま起きてきたポットが、ふらふらとした足取りで言った。「今日はいつもよりお早うですね……」
「ポット君。無理をして起きてこなくてもいいのよ」と、アレッタもあくびをしながら言った。「あれ、聞こえる?」
「――」
と、耳を澄ませたポットは、急に顔を青ざめさせた。
「大変です、扉の魔女様」と、大声を出したポットに驚いて、アレッタは思わず耳をふさいだ。「扉が騒いでます」
「でしょ」と、アレッタはポットと一緒に、扉のある部屋に急いだ。「扉が一斉に騒ぎ始めるなんて、これまでなかったのに」
アレッタは、扉のある部屋を開けた。
「たいへんだ。はやく、はやくたすけなきゃ。たいへんだ。はやく、はやく」……。
部屋中、所狭しと取り付けられた扉達が、同じ言葉をささやき合っていた。
「ちょっと、どうしたっていうの、君たち」と、アレッタは扉を落ち着かせるように言った。アレッタが言うと、わずかの間、落ち着きを取り戻したように静かになった扉だったが、すぐにまた、ひそひそとささやき始めた。
「ちょっと、待ちなさいってば!」
と、アレッタは大きな声を上げて言った。
「大変だ、大変だって、一体なにがどうしたっていうの? 誰か、私に教えてちょうだい」
しんと静まりかえった部屋の中、一番古めかしい扉が、こつこつと、ノックをするような小気味のいい声で、話し始めた。
「――」と、アレッタは小さなテーブルに着くと、黙って扉の話に耳を傾けた。