と、言ったサオリの声を背中に聞きながら、又三郎とアオは玄関のドアを開け、ゆっくりと外に出て行った。
遠くに聳え立つ切り立った山々から吹き下ろす風が、地面を覆う草花をそよそよと揺らしながら、心地よく鼻先をねぶる青臭い香りを運び去っていった。
――ガシャリ、ガシャン。――ガシャリ、ガシャン。
と、まだ姿の見えない青騎士の耳障りな金属音が、次第に大きさを増していった。
「来ます」と、又三郎は言うと、足下にかがんで地面に手を当て、自分の背よりも遙かに長い鉄の棒を取り出した。
――ガシャンリ、ガシャシャン。――ガシャンリ、ガシャシャン。
深い谷底から這い上がってきたのは、四体の青騎士だった。
青騎士の姿は、エスがラジオから伝えてくれたとおり、これまで戦ったどの青騎士よりも、ひとまわり大きくなっているようだった。まだらな色をしていた青騎士の鎧は、虹のようにいくつもの色を反射する鎧に変わっていた。
耳障りな金属音を響かせて近づいてくる青騎士達から、周囲の空気をビリビリと痺れさせるような、強い気迫を身に纏っているのが伝わってきた。
空を飛んであっという間に扉の魔女の家にやって来た自分達と比べ、命がけの険しい道のりを進み、何度も奈落の底に落ちながら、しかしその度に復活してやって来た青騎士達は、失敗を繰り返してバラバラに壊れた分だけ、明らかに強さを増していた。
「――」
と、又三郎は鉄の棒を背中に回した姿勢で、こちらに向かってくる4体の青騎士と正面から対峙していた。決して、後ろには引かないという強い覚悟で、充ち満ちていた。
「扉の向こうに行った方達は、無事なんでしょうか」と、又三郎は青騎士から目を離さないまま、頭の上に止まるアオに言った。「少なくとも、ここに四体がそろったということは、まだ死の砂漠には落ちていないということですよね」
アオは翼の間から木刀を取り出すと、その黄色いくちばしで素振りをしながら、キキッ――と、又三郎に答えた。
「――ふふん。アオ殿は、頼もしいですね。ですが、二人だけでこの四体の青騎士は、さすがに荷が重たい気がします。ポット殿とサオリ殿が、ちゃんと安全な場所に逃げる間だけでも、足止めしておければいいんですが……」
又三郎とアオを眼前に捕らえた青騎士達は、いったんその足を止めると、横一列に並び、それぞれが手にしている武器を構えた。