15 魔女の帰還
マコト達がそれぞれ扉の奥に向かってから、しばらくのことだった。
小さなテーブルの上に置かれたラジオから、急にアナウンスが聞こえ始めた。
“ねぇ、みんな気をつけて“
と、あわてたようなエスの声が聞こえた。
“あなた達を追いかけて、青騎士が向かっているわ。しかもやっかいなことに、道のりの険しい辺境にある扉の魔女の家に来るまでに、何度も足を踏み外して壊れては、その都度また復活を繰り返した青騎士は、あなた達がこれまでに戦ったどの青騎士よりも、遙かに強くなっているの”
「――聞きましたか、アオ殿」と、又三郎は頭の上に止まっているアオに言うと、キキッと、アオは勇ましい声を上げた。
ぴくりっ、と耳を震わせた又三郎が振り返ると、いつの間にか仲良しになっていたポットとサオリが、楽しそうに笑いながら、扉の魔女の家の中を走り回っている姿が見えた。
又三郎は、サオリ達に気づかれないよう、背伸びをしながら窓の外をうかがった。
頭の上に乗ったアオも、又三郎と同じく、外の様子をじっとうかがっていたが、異状に気がつかなかった又三郎が窓から離れようとすると、「あれを見ろ」とでもいうように、翼を激しく羽ばたかせた。
「――」
と、再び窓に向き合った又三郎は、ふわりと全身の毛を逆立たせ、無邪気に遊んでいるサオリとポットに言った。
「サオリ殿。ポット殿。とうとう、青騎士が現れたようです」
楽しそうにしていた二人の顔から、すっと血の気が引くように笑顔が消えた。
「どうしよう。大丈夫かな――」と、サオリは又三郎に駆け寄ると、震える声で言った。「でも、負けちゃいけないんだよね」
「そのとおりです」と、又三郎は振り返って言った。「――ポット殿。私とアオ殿で青騎士を迎え撃ちます。サオリ殿と一緒に、隠れていてください」
「うん。わかった」と、ポットは言うと、サオリの手を握った。「ぼくと一緒にいよう。もしも青騎士が家の中に入ってきたら、魔女様の扉に入って逃げればいいんだから」
「そのとおりです」と、又三郎は言った。「私達で歯が立たなければ、テーブルの上のラジオを持って、扉から逃げてください。扉の魔女殿が戻ってくれば、なにか助かる方法を考えてくれるでしょう」
「――気をつけてね」