「ふう――」
と、鎧の中から出てきたのは、魔女のアレッタだった。
出てきたアレッタは、つまずくように膝を折って地面に手をつくと、疲れた果てたように大きくひとつ息をついた。
抜け殻のようになった虹色の青騎士の鎧は、二人がかりで押さえていたジローとグレイ手の中で、さらさらと黄色い砂に変わって崩れていった。
「――魔女様」と、ポットはつないでいたマコトの手を離し、階段を飛ぶように降りて、アレッタのそばに行った。
「大丈夫ですか、魔女様」
と、ポットは倒れたアレッタに駆け寄ったが、体を起こせるほどの力もなく、ただそばにいて、心配そうに覗きこむだけだった。
「大丈夫よ」と、アレッタはポットの低い肩に手をかけながら、立ち上がって言った。「ちょっと、疲れちゃったわ」
と、又三郎はうなずいて言った。
「なにがあったんですか? 魔女のアレッタ殿」
「――そうよね。心配かけてごめんなさい」と、アレッタは申し訳なさそうに言った。「ゾオンっていう国に贈った王様の扉が、争いに巻きこまれた人達を逃がそうとしたんだけれど、ドリーブランドではない別の場所に連れて行こうとして、夢の扉とつなげてしまったの」
「なんで、夢の扉とつなげたんだ?」と、マコトは首をかしげて言うと、黙って聞いていたグレイ達も、同じように訳がわからないといった表情を浮かべて、マコトを見上げた。
「あなた達がいた場所に、人を逃がそうとしたからよ」と、アレッタは言った。「夢の扉とつながらなければ、ドリーブランド以外の場所には行けないんですもの」
「そいつらはどうなった。まさかオレ達は、逃げた連中と入れ替わりでこっちの世界に引っ張られたのか……」と、マコトは怒ったように言った。
「だめよ」と、アレッタはしっかりとした足取りで階段を上ると、サオリの手をそっと手で包みながら言った。「そんな姿で怒ったって、かわいらしさが増すだけだもの」
なにを――と、かんかんになってゲンコツを握りしめるマコトをなだめるように、ジローは言った。
「扉の魔女様。あなたは我々のことをよく知ってるみたいだ。マコトが言ったように、誰かの身代わりで、ここに呼ばれたのか」
「――」と、アレッタは首を振った。
「沙織ちゃんよ」
と、誰もが驚いたような表情を浮かべていた。
「沙織? どうして沙織が、おれ達をここに呼ぶんだ」と、ジローは困ったように言った。