「お願いだよ、マコト」と、グレイは言った。
「――」と、アレッタはまっすぐにマコトを見たまま、なにも言わなかった。
「――まず、その石をオレに返してくれ」
と、マコトはばつが悪そうにサオリに近づくと、手を伸ばした。
「だめ――」
と、サオリはアレッタに抱きつくと、怒ったように言った。
「この石は、お父さんを探すために必要なんだから。この石だけが、お父さんの居場所を教えてくれるんだから」
「わかった。ごめんよ……」と、マコトは降参したように両手を挙げると、ゆっくりと後ろに下がりながら言った、「だったらその石を、もう光らないように、そっとポッケにしまっておいてくれ。大事な物は、大切にしまっておかなけりゃだめだぞ」
大きくうなずいたサオリは、光を放たなくなった緑色の石を、さっとポケットにしまった。
「おまえ達もうすうす勘づいているとおり、サオリが行こうとしているところに、心当たりはあるぜ」と、マコトは言った。「魔女の言うとおり、それはここじゃない。オレ達がもともといた場所にあるんだ。だから、帰ってから探すことになる」
と、マコトは一度言葉を切って、大きく息をすると、すぐにまた話し始めた。
「行き方は知っているが、簡単にたどり着ける場所じゃないことも、また確かだ。ここに集まっているみんなの助けがいる。魔女も、猫も、ポットは置いといて、それこそみんなだよ。――本当に、集まるんだろうな」
「サオリのためなら」と、グレイは小さく言った。
「私でよかったら」と、アレッタはサオリの手を握りながら言った。
「魔女様は、異世界のおいしい物が食べたいだけじゃないんですか……」と、ポットは言いながら、疑わしいそうな目でアレッタを見た。
こくり、とアレッタにうなずくサオリを見て、ジローは言った。
「沙織が呼んでくれるなら、一緒に父親を探すのを手伝うよ」
キキッ――と、鳴きながら飛び上がったアオは、サオリの頭の上に止まった。
「どいつもこいつも」
と、マコトは一人、ため息をつくように言った。
「ピクニックに行くんじゃないんだぜ、おまえら――」
「私も、お手伝いをさせていただきます」と、又三郎が言うと、アレッタは又三郎の持っている袋を指さして言った。
「――壊れた王様の扉は、そこに入ってるんでしょ」
「はい。すぐに出します」と、又三郎は言うと、肩に掛けていた鞄を下ろし、バラバラに壊れた王様の扉を取り出した。