「扉に鍵を掛けて壊してしまったから、外に出られなくなったのよ」と、アレッタはポットを見ながら言った。「でも、夢の扉の知恵も借りて、なんとか青騎士と一体になることで、あなた達の元に向かったの。いくら扉がやったこととはいえ、あなた達をここに連れてきてしまったのは、私のせいですもの」
と、アレッタは壊れた扉を手にすると、鼻歌を歌うように呪文を唱えつつ、慣れた手つきで、パズルを解くように何度かやり直しながらも、王様の扉を元通りに組み立てた。
「そういえば、マジリック殿は、無事なんでしょうか」
と、又三郎は扉を組み直しているアレッタに言った。
「もう、本当に困った魔法使いよね」と、アレッタは言った。「強い魔法で無理矢理に扉を修理してしまったものだから、目が覚めた扉にゾオンの人達を送ったのと同じ世界に飛ばされてしまったわ」
「こちらに、帰ってこられるんでしょうか」と、又三郎はアレッタに訊いた。
「大丈夫よ」と、アレッタは笑顔を見せて言った。「当の本人はまだ残っていたいでしょうけど、ここにいるみんなが扉で向こうに帰れば、同じ流れに引っ張られて、帰ってこなきゃならなくなるわ」
「よかった」と、又三郎はほっと胸をなで下ろした。
「――準備はいい」
と、アレッタは組み立てた扉の後ろに立つと、小さな鍵穴に自分の指を差し入れた。
「それじゃ、扉を開けるわね――」
スッ――。
と、元どおりになった王様の扉が左右に開くと、涼しい風が勢いよく吹きつけてきた。 集まっていたジロー達は、アレッタの開いた扉に釘付けになっていた。
「――みなさんは、どちらへ?」
はっとして目をまん丸にした又三郎は、目の前から一瞬で消え去ってしまったた人達の痕跡を探そうと、足下の地面を探していた。
「元の場所に帰っていったわ」
と、アレッタはまだ明るい空を見上げながら、独り言のように言った。
「これで、私の任務も終了です」と、又三郎は言った。「後はマジリック殿が帰ってくるのを、待っているだけです」