――次元刀。それが、アオが思い出そうとしていた武器だった。どれだけ距離が離れていようと、どれだけ強固な武器であろうと、目の前にある空間ごと切り裂いてしまう奇妙な剣だった。
草原に降りたアオは、満足げに刀を振るうと、アオの父親がそうしていたように、翼の下から顔を覗かせた鞘に器用に刀を納め、外からではまるでわからないほど、しっかりと翼の下に刀をしまった。
キキッ――。
と、アオははっとして顔を上げると、もう一体の青騎士に向かって矢のように飛んでいった。
――――……
「――待てっ」と、虹色の鎧を纏った青騎士に追いついた又三郎は、手にした鉄棒を、槍のように投げつけた。
走りながら放たれた鉄の棒は、先端がわずかに左右にぶれたものの、青騎士の背に向かって一直線に飛んでいった。
カッツン――。
と、振り向きざま、手にした大剣を振るった青騎士は、寸手のところで鉄の棒をはじき飛ばした。
「その家には入らせません」と、青騎士の足を止めることに成功した又三郎は、虹色の青騎士と向かい合って言った。
しかし、又三郎の声が聞こえなかったのか、青騎士は思い出したかのように回れ右をすると、重そうな鎧をガシャリガシャリと揺らしながら、扉の魔女の家に向かって軽々と走り出した。
「――待てっ」と、又三郎は言いながら、青騎士を追いかけて走り出した。
又三郎は走りながら、両手を合わせてこね離すと、どこから出てくるのか、先ほど青騎士にはじき飛ばされたはずの鉄の棒が、又三郎の手の内から、にょろにょろと再び姿を現した。
「止まれ」と、又三郎は走りながら、青騎士に向かって鉄の棒を再び投げつけた。
ズン――。
と、又三郎の放った鉄棒が、青騎士の胴体を串刺しにした。
しかし青騎士は、勢いに乗った足を止めることなく、串刺しにされた鉄の棒を背中から生やしたまま、ポットとサオリのいる扉の魔女の家に向かっていった。
「――」と、又三郎は唇を噛んでいた。一投目の鉄棒が見えなくなったとたん、間髪を入れず又三郎の手に鉄棒が戻るのを目の当たりにした青騎士は、再び投げられた鉄棒に、わざと自分の体を串刺しにさせることで、鉄棒が又三郎の手に戻らないよう、掠め取ってしまったのだった。