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武蔵野物語 16

2008-02-02 18:05:42 | 武蔵野物語
ゆりこは新宿のKデパート地下で、評判のお弁当を二つ買って20時過ぎに誠二の家に着いた。
「遅くなりました、お腹空いたでしょう」
「いえ、急に呼び出してすいません、あの、ご自宅の方は大丈夫なんですか」
「ええ、父には連絡しておきました、父も今日は遅くなるから夕飯はいいって言ってましたから」
ゆりこからの電話で、父は却って喜んでいるようだった。
「それよりも、何かあったのですか?」
「ええ、家内がまた入院しまして、以前にも暑さ寒さの厳しい時期になると入院した事があるので、春まで出てこれないかも知れません」
「そうですか・・」
ゆりこは、この病気は長い時間が掛かるな、とため息が出そうになった。
「それで、自分勝手で申し訳なかったのですが、どうしてもゆりこさんに会いたくなって、気持ちが抑えられなくなってきて」
誠二はそう言うと、いきなりゆりこを抱きしめてきた。
「ま、待って、そんなの、よくないわ」
ゆりこはうわべだけ拒んだものの、されるがままに任せていた。
食事の前に寝室に連れて行かれ、一方的に押し倒されたが、いままでの誠二にはなかった強引さに、新たな刺激を受けていた。
1時間程して、ゆりこが入浴を済ませ出てくると、誠二がばつの悪そうな表情で食卓に座っていた。
「家内・・敦子とはもう何年も普通の夫婦関係はありませんでした、あなたと出会って人生が変りました、本当の女性としての素晴らしさを教えて貰い、感謝、いや感激しています」
「そんな、感激なんて・・私、あなたの家庭に入り込んでしまった、罪つくりな女です」
「罪なんて、言わないで下さい、全ては私が負わなければならないのですから」
「これからどうしたいの?」
「あなたとやり直したいのです」
「そんな簡単にはいかないわ、病気の奥さんを放り出すの?」
「時間を掛けても何とかしたいのです」


コメント
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