この冬の関東地方は週末の度に雪に見舞われ、暖冬の続くここ数年とは趣を異にしている。
当然ゆりこの住んでいる多摩地区は、東京でも寒い方の上位にランクされるだろう。それでも2月上旬になると、百草園で梅祭りが開催されはじめ、普段は通過する電車も臨時停車する様になると、春は近づきつつあるのだろうな、と雪の残る公園や橋の向こう側にある民家の屋根を眺めながら、いつもの風景との違いに新鮮さも感じている。
その厳しい寒さそのままに、ゆりこと誠二の問題もこう着状態になっていた。
誠二は今年に入ってから、敦子の病院には精々週一回程度しか行かなくなり、まだ彼女は別居の話を伝え聞いていないらしいが、離れている分勘が鋭くなってきているのか、たまにしか来ない事にはなにも触れない。
それどころか、いままで親に甘えてばかりで、あなたの面倒はなにもみていない、これでは失格ね、暖かくなって元気なったら、母の元には戻らず、家に帰りますからそれまで辛抱して下さい、と言うのである。
いままでにしたことのない気配りに、彼女なりの危機感があるのだろうか。
そういえば誠二は数年前、あの子は霊感の様なものを持っている、と敦子の母から聞いた事がある。
きょうは日が悪いから外出しない方がいい、と言い出して家に居ると、行く予定だった目的地で交通事故があったり、いつもの通り道の工事現場で、大きな落下物騒ぎがあったと話していた。
夫に別の女性ができた、ともうとっくに感じ取っているに違いない。
誠二は背中に寒気を覚えた。敦子は控えめでおとなしいが、自分の信念を絶対に曲げない頑なさを持っている。表面上は夫を立て従っているが、結果は自分の思い通りにならないと気が済まない性格に、以前ゆりこが、奥さんは別れてくれないわよ、とささやく様に話していたのを思い出した。
一方ゆりこの父は、益々あの女将と深みに入っていく様だった。
当然ゆりこの住んでいる多摩地区は、東京でも寒い方の上位にランクされるだろう。それでも2月上旬になると、百草園で梅祭りが開催されはじめ、普段は通過する電車も臨時停車する様になると、春は近づきつつあるのだろうな、と雪の残る公園や橋の向こう側にある民家の屋根を眺めながら、いつもの風景との違いに新鮮さも感じている。
その厳しい寒さそのままに、ゆりこと誠二の問題もこう着状態になっていた。
誠二は今年に入ってから、敦子の病院には精々週一回程度しか行かなくなり、まだ彼女は別居の話を伝え聞いていないらしいが、離れている分勘が鋭くなってきているのか、たまにしか来ない事にはなにも触れない。
それどころか、いままで親に甘えてばかりで、あなたの面倒はなにもみていない、これでは失格ね、暖かくなって元気なったら、母の元には戻らず、家に帰りますからそれまで辛抱して下さい、と言うのである。
いままでにしたことのない気配りに、彼女なりの危機感があるのだろうか。
そういえば誠二は数年前、あの子は霊感の様なものを持っている、と敦子の母から聞いた事がある。
きょうは日が悪いから外出しない方がいい、と言い出して家に居ると、行く予定だった目的地で交通事故があったり、いつもの通り道の工事現場で、大きな落下物騒ぎがあったと話していた。
夫に別の女性ができた、ともうとっくに感じ取っているに違いない。
誠二は背中に寒気を覚えた。敦子は控えめでおとなしいが、自分の信念を絶対に曲げない頑なさを持っている。表面上は夫を立て従っているが、結果は自分の思い通りにならないと気が済まない性格に、以前ゆりこが、奥さんは別れてくれないわよ、とささやく様に話していたのを思い出した。
一方ゆりこの父は、益々あの女将と深みに入っていく様だった。