朝夕は、少し涼しくなったと思う間に9月です。
忙しさにひとくぎりついて、部屋を見回すと長く借りたままの文庫本が目につきます。
早く、お返ししなくては・・・と開いて、またまた原田泰治さんの絵に引き付けられてしまいました。
以前にも紹介した本ですが、最後まで見返していました。
「薬売り」と題された絵は子供の頃、大きな風呂敷包みをかついで来ていた富山の薬屋さんです。
これは、私にも懐かしい思い出があります。
年に数回の訪問ですが、紙風船や折り紙人形をもらったことを鮮明に覚えています。たまには菓子などももらったような・・・
薬売り
作者は、各地を実際に訪ねてその土地で見た、懐かしい風景を描いています。わが県岐阜の絵は郡上八幡を描いた「夕涼み」1枚のみが紹介されていました。
夕涼み
どの絵も風景に数人の人物が添えられていますが、よく見ると描かれている顔には、ぽっとした赤みがのっているのみで、に目・鼻などは描かれていません。それでいて、その雰囲気はしっかりと伝わってくる・・・原田泰治さんの独特の絵なのです。
遠く遠く、忘れてきた日のものを思い出させる。懐かしく、あまく、あったかい思い出の数々を彼の絵は、心の奥の方から呼び起こす、不思議な力をもっている・・・・原田泰治の世界によせて(椋 鳩十)より抜粋
もう一度、一つ一つ見直し、心がほかほかと温まったような気分です。疲れが癒やされる小さな文庫本でした。