「Slack-key Guitar」は、ハワイで生まれたギター奏法。
「E、A、D、G、B、E」と並ぶスタンダード・チューニングとは異なり、オープン・チューニングで弾く奏法だ。
1800年代、英国国王からハワイに贈られた牛3頭が繁殖して困ったカラカウア王はテキサス、メキシコあたりのカウボーイを招いた。
エスパニョーラがなまって「パニオラ」と呼ばれた彼らはギターを携えてきて故郷を懐かしんだのだろう。
やがて彼らが帰国して残されたギターはチューニングが緩んでいた。
スタンダードチューニングを知らないハワイアンたちは思い思いのチューニングを試してみてそれぞれの奏法を編み出した。
「EADGBE」と並ぶはずのチューニングを3本緩めれば「DGDGBD」ハワイでいう「タロパッチ」Tuneになる。
開放弦で弾いただけで「G」コードが出るし、5フレットをセーハすれば「C」コードが出る。
なによりコードダイヤグラムの制約から解放され、低音弦でベースランが、高音弦で自由な演奏が可能になる。
これを膝の上に乗せて「バー」でスライドしたら「スティール・ギター」になった。
このハワイの伝統的な奏法は、ファミリー内で受け継がれ門外不出とされたため広く知られていなかった。
ハワイでもギャビィ・パヒヌイのシングル盤「Hi'ilawe」が出てからハワイ全島に知れ渡ったようだ。
そしてギャビィ・パヒヌイのアルバム「Gabby」によってこのハワイの伝統文化が世界に発信される。
かの「Ry Cooder」が奥様のハワイ土産にもらったこのアルバムによって「ぶっとんだ」
その後ギャビィをサポートしたピータームーンや名作「Gabby Pahinui Hawaiian Band」によって「Slack-key Guitar」による「ダカイン・サウンド」は、同時進行した「ハワイアン・ルネサンス」とともに歴史に残ることになる。
「ジャラーン」と鳴ったギターサウンドが「Slack-key 」奏法によるものかどうか、はマニアでもわからないだろう。
ただ、ナチュラル・チューニングでは得られない音色が得られることと、異なるチューニングの複数のギターによるアンサンブルは計算できない音楽の世界を展開することはおわかりいただけるだろう。
先般、郷里の盟友F君と「Puff」をウクレレとギターでセッションした。
モダン・フォークと称されたあの時代のタイトなフォークソングを「ゆったりしたトロピカル・フレーバー」で表現してみたかった。
さて今年9月に「Slack-key Festival in Tokyo」が、東京大手町で開催されることになった。
長年ハワイ各島、米本土でのフェスを支えてきたミルトン・ローが、ご子息を含めたミュージシャンを引き連れて来日してくれる。
時間の流れは、残念ながら70年代に活躍したミュージシャンを見ることはできないかもしれない。
が、新しいミュージシャンの登場という世代交代を見せてくれるようだ。
来日予定のStephen氏「スラックキーでディランを演る」というアイデアを先にやられてしまった。
まあ、いいか。
こちとらリアルタイムでモダンフォークを見てきたんだ。
別物の「ディランをトロピカルで演る」アイデアをやろうではないか。
F君、O君。
ご期待あれ、じいじ世代の逆襲を。
"Forever Young", Sung By Stephen Inglis (Bob Dylan Cover)
"Like A Rolling Stone" Stephen Inglis With LT Smooth, Chris Lau And Patti Maxine (Bob Dylan Cover)
Koke?e - Perfomed by Dennis Kamakahi & Stephen Inglis
Pua Hone, Dennis Kamakahi and Stephen Inglis