気ままなZOO

行った場所、見たもの、感じた事、気ままにねぇ…… きままなZOOです。旅のお話、動物園、水族館のお話を…

創作 不思議な眼・・・  リクに捧ぐ

2006-10-12 | 創作…
夏も終わった頃。
ある日の昼過ぎのことです。

「こらー! おしっこしたのか!!」

玄関からお父さんの怒鳴り声が聞こえました。
すぐにタカシは玄関にむかいました。

なんと、リイがお客さんの靴に
おしっこをしてしまったのです。
リイは顔を伏せて尻尾を丸めています。

タカシ君の家で飼われているリイはほんとにいたずら好きです。 
それなのに、リイは、怒られている時も
「なぜ僕がわるいの?」という眼で見つめるんです。
怒る人は本当に困ってしまいます。

でも、今のお父さんの怒り方は普通ではありません。
真っ赤になって怒鳴るお父さんが恐くて、タカシは自分の部屋に戻りました。
「あんなに怒ったお父さんは久しぶりだ。内緒で僕がトラックの荷台に乗ったときみたいだ…」

夕食の時間になりました。
「恐いお父さんのままかなぁ」
タカシはおそるおそる居間へ向かいました。
「よかったぁ」
お父さんの目はいつもの穏やかな光に戻っています。
庭に向けたお父さんの眼差しの先には
お気に入りの黄色いボックスにちょこんと座っているリイがいました。

リイはあのキョトンとした眼でこちらを見ているのでした。
「リイの眼には不思議な力があるのかもしれない」
タカシはぼんやりと思っていました。


      


秋も深まり、陽も和らいだ日曜日。

タカシは部屋で泣いていました。
昼間、タカシはお父さんに強く叱られました。
お父さんの目は真っ赤で、いつもの優しい眼ではありません。
隣の庭に石を投げ入れて遊んでいたのを叱られたのです。
「ちょっとだけなのに。誰もいなかったのに…」

しばらくして、
タカシを呼ぶお母さんの声が聞こえてきました。
もう夕食時です。でも、居間に行きたくありません。
「まだお父さんは怒っているんだろうなぁ…」

時間がたちました。お腹もすいてきます。

おそるおそる居間へ、むかいました。

座っているお父さんをゆっくりと見ると…
いつもの穏やかな目のお父さんでした。

「よかった」

あの時と同じだ。リイがイタズラをした日を思い出しました。

タカシは庭に眼をやりました。
黄色いボックスが見えます。

でも、
もうリイはいません。
先月、家の前でトラックにはねられて
天国へ旅立ったのです。

自分の席に座って、お父さんの穏やかな眼を見ると
リイのキョトンとした目を思い出しました。

タカシは
眼の中が熱くなったように感じるのでした。





ちょうど一ヶ月前、ブログ仲間の六花窯の飼い犬のリク君が
交通事故で亡くなりました。
リク君の事を考えていると、このお話が思い浮かびました。

リク君のご冥福を心よりお祈りします。

http://blog.goo.ne.jp/rikkagama/e/63e7b75ff7f708e15278d28ad67d374b

http://blog.goo.ne.jp/rikkagama/e/861e813733b7fc10142b79128ad71d5e
コメント (6)
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