毎日新聞より転載
<三反園県知事>川内原発の一時停止と再点検、申し入れへ
毎日新聞 7月28日(木)12時5分配信
職員の出迎えを受け初登庁する三反園新知事=鹿児島市の鹿児島県庁で2016年7月28日午前9時34分、須賀川理撮影
鹿児島県知事に元テレビ朝日コメンテーターの三反園訓(みたぞの・さとし)氏(58)が28日就任し、国内で唯一稼働している九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(同県薩摩川内市)の一時停止と再点検を8月下旬から9月上旬に申し入れる考えを表明した。ただ稼働中の原発を止める法的権限は知事にはなく、九電の今後の対応に注目が集まる。
「熊本地震があり、原発は本当に大丈夫なのかという不安が県民の間にある。九電に強く申し入れたい」。三反園知事は初登庁後の就任記者会見で、そう言明した。九電の3号機建設計画についても「今の状況では難しい」と述べ、「原発に頼らない社会に一歩でも二歩でも近づけていきたい」と繰り返した。
ただ、原子炉等規制法には原子力規制委員会が原発の使用停止を命ずることができると規定されているものの、知事には権限はない。規制委の田中俊一委員長も27日の定例記者会見で「何を点検するのか理解できない。熊本地震の影響はないということは我々がさんざん発信してきた」と不快感を示した。
これに対し、三反園知事は「権限のあるなしに関係なく、県民の不安に応えるのが知事の責任だ」と反論する。九電は「熊本地震後にも安全性を確認している」(幹部)としてすぐに応じる考えはないが、知事の要求とは関係なく、原子炉等規制法に基づく定期検査入りのため1号機は10月6日、2号機は12月16日に停止する予定だ。九電はそれぞれ約2カ月後には再び稼働させたい考えで、予定通り運転再開できるのかが焦点となる。
定期検査後の運転再開に県との事前協議は不要だが、ある幹部は「知事が強硬に反対していれば、動かすのはためらわざるを得ない」と話す。九電は鹿児島県と安全協定を結んでおり、新たな原子力施設の設置や設備変更のたびに了解を求めることにしており「就任してすぐから、話し合いもできない関係にするのは得策ではない」と話す。一方で社内には「知事が反対すれば原発が止まるという前例を作ったら、全国の電力会社に影響が広がる」との懸念もあり、対応に苦慮している。
首藤重幸・早稲田大法学学術院教授(原子力行政法)は「原発を止めるのは法的には自治体では無理かもしれないが、政治のレベルでは可能。地方自治法の精神を再認識することが大事だ」と指摘している。【杣谷健太、遠山和宏】
◇九州電力川内原発を巡る経過と今後の流れ
2014年 9月 1、2号機が原子力規制委員会の審査に合格
11月 鹿児島県の伊藤祐一郎前知事が再稼働に同意
2015年 8月 1号機が再稼働
10月 2号機が再稼働
2016年 7月10日 鹿児島県知事選で、三反園訓氏が伊藤前知事を破り初当選
28日 三反園氏が知事就任
8月下旬~9月上旬? 三反園氏が九電に1、2号機の停止要請
10月 6日 1号機が定期検査のため運転停止の予定
12月16日 2号機が定期検査のため運転停止の予定
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最終更新:7月28日(木)17時23分
毎日新聞
<三反園県知事>川内原発の一時停止と再点検、申し入れへ
毎日新聞 7月28日(木)12時5分配信
職員の出迎えを受け初登庁する三反園新知事=鹿児島市の鹿児島県庁で2016年7月28日午前9時34分、須賀川理撮影
鹿児島県知事に元テレビ朝日コメンテーターの三反園訓(みたぞの・さとし)氏(58)が28日就任し、国内で唯一稼働している九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(同県薩摩川内市)の一時停止と再点検を8月下旬から9月上旬に申し入れる考えを表明した。ただ稼働中の原発を止める法的権限は知事にはなく、九電の今後の対応に注目が集まる。
「熊本地震があり、原発は本当に大丈夫なのかという不安が県民の間にある。九電に強く申し入れたい」。三反園知事は初登庁後の就任記者会見で、そう言明した。九電の3号機建設計画についても「今の状況では難しい」と述べ、「原発に頼らない社会に一歩でも二歩でも近づけていきたい」と繰り返した。
ただ、原子炉等規制法には原子力規制委員会が原発の使用停止を命ずることができると規定されているものの、知事には権限はない。規制委の田中俊一委員長も27日の定例記者会見で「何を点検するのか理解できない。熊本地震の影響はないということは我々がさんざん発信してきた」と不快感を示した。
これに対し、三反園知事は「権限のあるなしに関係なく、県民の不安に応えるのが知事の責任だ」と反論する。九電は「熊本地震後にも安全性を確認している」(幹部)としてすぐに応じる考えはないが、知事の要求とは関係なく、原子炉等規制法に基づく定期検査入りのため1号機は10月6日、2号機は12月16日に停止する予定だ。九電はそれぞれ約2カ月後には再び稼働させたい考えで、予定通り運転再開できるのかが焦点となる。
定期検査後の運転再開に県との事前協議は不要だが、ある幹部は「知事が強硬に反対していれば、動かすのはためらわざるを得ない」と話す。九電は鹿児島県と安全協定を結んでおり、新たな原子力施設の設置や設備変更のたびに了解を求めることにしており「就任してすぐから、話し合いもできない関係にするのは得策ではない」と話す。一方で社内には「知事が反対すれば原発が止まるという前例を作ったら、全国の電力会社に影響が広がる」との懸念もあり、対応に苦慮している。
首藤重幸・早稲田大法学学術院教授(原子力行政法)は「原発を止めるのは法的には自治体では無理かもしれないが、政治のレベルでは可能。地方自治法の精神を再認識することが大事だ」と指摘している。【杣谷健太、遠山和宏】
◇九州電力川内原発を巡る経過と今後の流れ
2014年 9月 1、2号機が原子力規制委員会の審査に合格
11月 鹿児島県の伊藤祐一郎前知事が再稼働に同意
2015年 8月 1号機が再稼働
10月 2号機が再稼働
2016年 7月10日 鹿児島県知事選で、三反園訓氏が伊藤前知事を破り初当選
28日 三反園氏が知事就任
8月下旬~9月上旬? 三反園氏が九電に1、2号機の停止要請
10月 6日 1号機が定期検査のため運転停止の予定
12月16日 2号機が定期検査のため運転停止の予定
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最終更新:7月28日(木)17時23分
毎日新聞