:〔続〕ウサギの日記

:以前「ウサギの日記」と言うブログを書いていました。事情あって閉鎖しましたが、強い要望に押されて再開します。よろしく。

★ シンフォニー 《無垢な人々の苦しみ》 =アウシュヴィッツ編(その-2)=

2013-08-24 01:16:22 | ★ シンフォニー 《ポーランド》

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  シンフォニー 《無垢な人々の苦しみ》 

= アウシュヴィッツ編 = ②

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早々とボランティア―の場内整理係が配置に就き始めた

 

午後4時開演なのに、正午には人が入り始めた

前の方に席が取れれば、舞台の様子も見えるが、1万2000席の最後尾では舞台の人は豆粒ほどにしか見えない

各所に配置された大きなスピーカーと大きな電光スクリーンだけが頼りになる

イスラエルの旗を掲げたグループは、クラカウあたりからのユダヤ人の団体だろうか

リュックを背負ったシスターの姿もある

キコがどんなルートを使ってどのような層の人々を招待しているのだろうか、興味がある 

 

キコは、続々と入ってくる一般聴衆のほうに目をやって、なにやら満足げだ 


早々とクラカウの大司教、スタニスラオ枢機卿が前方の来賓席のあたりに姿を現した

彼はポーランド出身のヨハネ・パウロ二世教皇の秘書だった

大司教になってかなり太ったように見受けられる

その左側の司教の顔も見覚えがあるが、さて、どこの誰だったか・・・

 

  

左の写真の真ん中、黒いキッパ(ユダヤ人の男性が頭に乗せる皿形の帽子)のラビ(ユダヤ教の教師)と挨拶しているのは、

オーストリアのウイーンの大司教のシェーンボルン枢機卿(カトリックの枢機卿は赤のキッパを頭に乗せるのが習わし)。

彼は今回のコンクラーベ(教皇選挙)では有力な教皇候補だったと言う話をきいた。

右の写真でシェーンボルン枢機卿と話をしているのは、たしかホロコーストの生き残りのラビのアルトゥール・シュナイアー師

ではないか、そして右側で右を向いているのは全米ユダヤ人協会国際部長のラビ・ローゼンだ。

いずれもアメリカでのシンフォニーツアーのとき、ニューヨークでも、シカゴでも、ボストンでも重要な役割を演じた人たちだった。

 

来賓のラビたちと歓談するキコ

 

バチカン側からは、元コル・ウヌムのコルデス枢機卿(左)、

信徒評議会議長のリュウコ枢機卿(右)などおなじみの顔が並んでいる

 

  

たぶん、ポーランドのユダヤ人社会の中で有力なラビたちなのだろう。 アメリカツアーの会場では見かけなかった

顔ぶれが大勢いる。

 

いよいよ演奏開始。 スペイン人の若い指揮者 パウ が客席に向かって一礼をする。

 

コンサートホールの生の音とは違うが、大スピーカーから吐き出される演奏はそれなりに強烈な迫力がある

この日、アウシュビッツ第二強制収容所を訪れた人々は皆、それを遠くに聞いただろう

人々は、このアウシュヴィッツの殺人工場と言う特別な環境で、

ガス室で殺され、焼却炉で灰にされていった110万の人の

「無垢な人々の苦しみ」

という表題で演奏された5楽章のシンフォニーをどういう感動をもって受け止めただろうか

その大部分がユダヤ人だったこの魂たちの苦しみには、一体どういう意味があったのか

同じヤーウエの神をいただくユダヤ教徒とキリスト教徒の

2000年にわたる相互憎悪(と言ってはきつすぎれば)、相互否定、相互拒否

の不幸な歴史にこのシンフォニーは終止符を打ち

相互の赦しと和解に道を開き、

一致して唯一の創造主なる神の 救済の福音伝達に協力し

ともに復活と永遠の命を告白する第一歩を印す歴史的な出来事の始まりがここにあった

 

キコのシンフォニーに応えて、ユダヤ教の会堂の有名な歌い手が、

ホロコーストの悲劇の哀歌を朗々と歌い上げた

その中で、アウシュヴィッツ、ダッハウ、トレブリンカ、等々、

一連の世界に有名な強制収容所の名前が、メロディーを付けずに連呼された

 

クラカウの大司教スタニスラオ枢機卿が結びの挨拶に立ち、この日の歴史的な意味について話した

 

来賓席の後ろあたりで、見知らぬご婦人が私を呼び止め、

 「あなたは人ばかり写しているが、たまには自分も写ればいい」

といって、カメラを取り上げ、シャッターを押してくれた。

 

全てのプログラムが終り、余韻をかみしめ名残を惜しむ交流が舞台と客席の間にあった

 

2013年の東欧の長い夏の日もいつしか終わり、太陽が西の空に沈もうとしていた。

次はポーランドの首都ワルシャワの東にあるルブリンの町での演奏だ。


昨年5月のアメリカ東部のコンサートツアーの記事と合わせて読んでいただくと

全体が立体的に見えてきます。是非お勧め!

( つ づ く )

 

 

 

 

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★ シンフォニー 《無垢な人々の苦しみ》 =アウシュヴィッツ編=

2013-08-22 15:47:59 | ★ シンフォニー 《ポーランド》

 

ジャガイモ畑の向こうの 麦畑のさらに向こうはるかに ビルケナウ強制収容所の監視塔が見えてきた

 

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  シンフォニー 《無垢な人々の苦しみ》 

= アウシュヴィッツ編 =

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前日に見たアウシュヴィッツのホロコースト博物館から バスで5分と離れていないところに

アウシュヴィッツの第二強制収容所がある

悪名高き 「ビルケナウ強制収容所」 だ

今は ユネスコの 「負の世界遺産」 として認定されている

その広大な敷地は 東京ドームの約37倍で 世界最大の 絶滅収容所」 と呼ばれる 

 

 その正面の入り口に向かって 一本の引き込み線が今も真っ直ぐに延びている

 

収容所の構内に貨車でたどり着いた人々を待ち受けている運命については

前のアウシュビッツの記事の描写で十分すぎるほどだから 敢えて繰り返さない

ただ一つの違いは

その規模がそれよりさらに何倍も大きいということだろうか

 

その構内からふと外を見ると 何やらロックコンサートのステージのようなものが 設営の真最中だった

 

一口に野外ステージと言うが 横から見ても その大きさは半端ではない

 

巨大なスピーカーがパイプ枠の中に吊り上げられ 仮設トイレも万里の長城のように並べられていく

 

ステージの上では オーケストラが既にリハーサルの真最中だった

前年5月 ボストン ニューヨーク シカゴ とアメリカの東部をツアーで回った

あのキコお抱えの お馴染みのオーケストラだ

 

ステージからは ビルケナウ強制収容所の正面がすぐそばに見える

 

目を上げると お天気が怪しくなってきた 黒雲が空を覆い始め 風がステージのシートをばたつかせた

と思ったら バケツをひっくり返したような土砂降りの雨が 雷鳴と共に叩きつけてきた

 

ヴァイオリンも オーボエも ティンパニーも ハープも

ステージの中に容赦なく横殴りに吹き込む雨の前には なす術もない

みんな 楽器をかばいながら 周りの仮設のテントの中に 走り込んで遁れる他はなかったのだが

強制収容所の佇まいも雨に煙っていた

 

待つこと約1時間 嵐が通り抜けた後には 虹が立った

 

虹を背に ステージの赤い絨毯はびしょ濡れだったが もうあまり時間がない

 

ステージの前には リハーサルに並行して 手際よく椅子が並べられていった 

雨上がりに 1万2000席が用意された ニューヨークやシカゴの時と規模が全然違う

各々の楽器に直接マイクロフォンが取り付けられ 一つ一つテストして

それをミキサーが集めて大スピーカーから流すという手法は

野外ロックコンサートなどと同じ原理だが クラシックの音楽の場合 はたしてどういう結果に終わるのか・・・

 

世界に生でオンエアーするテレビの中継車も画像と音響の調整に余念がない

 

そんな中 若いハンサムなスペイン人の指揮者 「パウ」 は 通し演奏の棒を振るのに余念がない

 

マイクの前に立つ コーラスを下支えするバスも 下腹に力が入っている

 

聖母マリアのパートのソロを天使のように澄み切った声で歌うソプラノは まだ20歳に満たない

さて 本番はどのような展開になるか それは次回のお楽しみ・・・

 

( つ づ く )

 

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