第19期竜王戦総括。

2006-12-22 | 将棋
開幕前インタビューで自信があると言ってはみたものの(自信がないと言う人はいませんが)自分が佐藤棋聖に勝つという姿がイメージできませんでした。今期の対局数、勝ち星は倍くらい違うしこっちはタイトル挑戦もできていません。直近の対戦では2連敗しています。不安だらけでしたが9月以降、将棋に費やせる時間が増えたので戦えるのではないかという希望も持っていました。不安のほうが大きい状態で開幕を迎えました。

第1局、チャンスらしいチャンスはなく完敗。「やっぱりか」と落ち込みました。

第2局、大激戦の末、負け。実際はどうだったか分かりませんが自分では中盤以降は押し気味に進めることが出来たと感じたので戦えるという手応えを掴みました。
ただ2連敗というのは重たい事実。第2局と第3局の間は竜王戦で負ける夢を何度も見ました。

第3局、終始苦しい将棋でしたが終盤で△7九角という手が出ました。この手は前々から読んでいたわけではなく「絶妙手が落ちていた」という感じです。この手が出現したことにシリーズの運を感じます。この将棋が大きかったです。

第4局、この将棋はどんな展開になっても最後は勝つと思っていました。なんとなくですけど。それ程、第3局の勝ち方が奇跡的だったということです。

第5局、ここからが本当の勝負だと思いました。難解な将棋の末に勝ち。良い内容で勝てたので希望が膨らみました。

第6局、流れはこちらですがそう簡単に行くとは思えませんでした。振り飛車うんぬんではなく納得行くまで考えられなかったのが敗因です。
内容完敗、時間も余してという第7局に向けて嫌な負け方。
「振り飛車だから参考外」と思うしかありませんでした。

そして第7局。最後だし悔いが残らないように納得行くまで考えて指そう。それだけを決めて家を出ました。攻勢という好きな展開になったこともあり落ち着いて指すことが出来ました。

今回の七番勝負は本当に苦しい戦いでしたがこの経験はかけがえのない財産です。
改めて将棋の厳しさ、深さ、難しさを実感しました。
あまりにも精神的に厳しかったのでもうこんな思いはこりごりだという気持ちとまたこんな勝負がしたいという気持ちが半々といったところです。

年内も対局がありますし、対局が続きます。年末年始はゆっくりしてまた頑張りたいと思います。ありがとうございました。
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竜王戦七番勝負第7局。

2006-12-22 | 対局
帰宅しました。例によって振り返ります。

1日目:振り駒で先手に。後手番になったら追従するつもりでしたが主導権を取れないので先手番が欲しいと思っていました。
2手目△3二金の連投には驚きましたが4手目△4一玉を見て佐藤棋聖が△3二金にこだわった理由が分かりました。この手がいい手でした。しかし4手目にして早くも新手とは将棋にはまだまだ可能性があるんですね。
先手としては▲2七歩:△8四歩型の矢倉にしたいのですが、それができません。例えば▲6八銀とすると△3四歩と突かれて▲2七歩:△8三歩型の矢倉になってしまいます。よって5手目は▲2六歩として▲2六歩:△8四歩型の矢倉に。これは少し妥協した手順と言えます。△4一玉をとがめに行くなら相掛かりなどもあるのでしょうが、最終局なので矢倉にと思いました。
2手目△3二金に対して▲2六歩なら△8四歩で角換わりの出だしに合流します。なので△3二金は角換わり党の人にはあまり効果がありませんが矢倉党にとっては厄介な手になるかもしれません。ただの挑発ではありませんでした

▲3七銀から3筋交換の▲4六角:△6四角対抗型に。
手順は違いますが47手目は一年前にNHK杯戦で井上八段と指した将棋と同じ局面です。ここで後手の選択肢は△7四銀と△9五歩という認識だったのですが△8四銀という手があったとは。これに対して▲3六銀と立つと△6九角の筋で狙われるので角交換して▲4六銀と受けにも使えるようにしました。
52手目は攻められる手を考えていましたが、どれも互角以上に戦えると感じていました。△7三銀にはビックリしましたが指されてみればなるほどの一手で「攻めろ」と言われると有効な攻めがありません。この辺りの駆け引きは矢倉ならではです。攻めもないので△6五歩~△3九角を防ぐ▲5七銀を封じ手に。

夕食後、控室でボクシングを見て21時に自室へ。21時半頃に布団に入りました。「2年前はあまり寝られなかったんだっけ」などと思い出していました。2年前は勝ち負けに直結する局面だったのですが今回はまだまだこれからという局面。すぐに寝られるだろうと思ったのですが・・・。あれこれ考え出したら気になってしまいました結局、寝たのは1時過ぎだったと思います。

2日目:△9五歩▲4六歩までは予想通り。次の△6二銀は考えていませんでした。攻めるならここしかないと思い▲4五歩と仕掛けました。
65手目▲4六銀と出た局面では△6二銀を使うのに2手掛かるのと右桂の働きの差で指せると思っていました。
千日手模様でしたが千日手にはなりません。71手目▲2四歩が感触の良い手。飛角交換は▲5二角と打つ手が▲4一角成、▲4一角打などを見て厳しい手になります。2筋と3筋に歩が立つのでこれは先手良し。
81手目は▲1六飛のつもりだったのですが△3五歩で攻めが細いことに気が付いての予定変更。再度△3八馬なら▲2四飛と歩を取ってから▲2六飛△4八馬▲1六飛のつもりでした。
この辺りは指せるとは思いましたが具体的な攻略手順がないのでどうかなと感じていました。
103手目▲3五歩と打って局面が考え易くなったと感じました。
飛を取って勝ちになったと思いました。この後は「慎重に慎重に」と言い聞かせていました。
123手目▲2四歩~▲5七角が見えて勝ちを意識しました。
135手目▲4四角のところは少し複雑な手順なので何度も何度も確認しました。

勝って4勝3敗で防衛。本当に苦しいシリーズだったので勝ちが決まった時は涙が出そうなくらい嬉しかったです。応援ありがとうございました。

10月からピリピリしている状態が続いていました。その緊張感から解き放たれて打ち上げではいつも以上にお酒がおいしく感じました

今夜にでも竜王戦総括を書きたいと思います。
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