マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
すべての写真、文は著作権がありますので無断転載はお断りします。

斑鳩町高安天満宮トーヤのお渡り

2011年11月12日 08時03分52秒 | 斑鳩町へ
お神楽が行われている頃はトーヤの家でもてなす会食。

振舞われるお酒もいただいていた。

お渡りの前の直会であろう。

そのトーヤの家は「ヤド」とも呼ばれている。

公民館にしてはどうかという意見もだされたが、神さんは家に来るものだと意見は退けられ、今もなおヤドでされている。

「ヤド」である印といえば「今月今日」の文字が書かれた御神燈の行燈。

その行燈を辿っていけば「ヤド」の家に着く。

このような目印は広陵町三吉専光寺の地蔵盆の立山祭でも見られた。

「ヤド」では朝から千本杵でゴクツキ(御供搗き)をしていた。

神社に献饌される大きな餅(2枚の一升モチ)で小さな太鼓を叩いて搗いていたという。

お供えは7本のダイコンやレンコン、ゴボウ、ドロイモなど。

トーヤは和装の羽織姿で下駄を履く。

宮座は上六人(宮六人とも呼ばれる)と下六人。

上六人は宮さんを司っている長老たち。

年齢順に一年ずつ交替するので実質6年間のお勤めである。

下六人は行事に入るマワリ(回り)で座入りした二十歳のウイトウ(初トウであろう)。

そこからコヨリクジで選ばれる下六人だそうだ。

トーヤは羽織袴で6人のウイトウは烏帽子を被り素襖の衣装姿。

白い御幣を持つ。

穂付き稲を両端に取り付けたサカキ。

これをイナサカキと呼んでいる。



桶には甘酒。

それぞれは六人衆の身うちにあたる人がトモとなって担いでいく。

ホラ貝を吹く人と座中提灯を持つ人が先頭にお渡りが始まった。

「ブォー ブォー」と吹き鳴らす道中。

真っ暗な道を通って天満宮へ行く。

その姿を一目見ようと村人が道中で出迎える。



ホラ貝はその合図なのであろう。

夜のお渡りは県内事例ではあまり見かけない形式だと思われる。

お渡りの際には、かつて40人もの人たちがオーコで担ぐ蒲団太鼓を出していたそうだ。

境内に入って宮入りをする際には邪魔をする人たちとのせめぎ合いで盛りあがったという。



それは30分ほども続いたそうである。

本殿前に立ったのはウイトウ。

御供の風呂敷と同様に家紋がある装束が特徴だ。

それは家の格式を示す象徴ではないだろうか。



家族は拝殿で神事を見守っている。

祓えの儀、祝詞奏上、献饌、玉串奉奠など滞りなく進められる。

以前はローソクの明かりだけだったというから相当暗かった。

今では電燈が照らしているがそれでも暗い神社で神事をされたあとは6本の御幣が本殿に残った。



なおイナサカキはトーヤの家に持ち帰るそうだ。

(H23.10. 9 EOS40D撮影)