マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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松尾の要人

2011年11月24日 06時41分56秒 | 山添村へ
松尾の要人(ようじん)と呼ばれる舞人は予め決められていた祭典控の順番帳に記載された8人である。

9月に大字役員総代が集まる遠瀛(おおつ)神社のコモリの日に今年の要人と当家を決めたそうだ。

万が一、穢れがあれば遠慮してもらって次回に回ってもらう。

穢れがあるからと2年もあけることだったが、現在は祭りから祭りの一年間としている。

祭りの年の当家は10月初めには家の神さんを迎えておく。

座敷の前庭若しくは門前に青竹を立て紙垂れ注連縄を張った家が当家だ。

宵宮の日の朝に同家へ訪問する要人たちは和服姿。

「本日はおめでとうございます」と挨拶をすれば「お忙しい処、おひま取りしてご苦労さん」と受け入れる。

年長順で決められる要人の役割。

特に笛吹きが肝心であるだけにそれを考慮しながら役割が決められる。

お渡りの先頭は当家で御幣を持つ。

ヒワヒワと呼ばれる弓役、ガシャガシャと呼ばれるササラ役、太鼓役、笛吹き役、鼓役が続く。

「ピ、ピ、ヒゥー、ヘ、ホ」と音階は決まっているが、文字では判り難い音符だ。

音色となる「ピッ、ピッ」は上の穴を開けて吹く。

「ヒゥー」は真ん中の穴を開けて吹く。

全部の穴を塞ぐ「ヘッ」。

逆に全部開ける「ホッ」というわけだ。

これを二人の奏者が呼吸を合わせて吹くのである。

宵宮の日には何度もそれを繰り返してジンパイ(神拝)をされてきた笛吹き。

その音に合わせて太鼓と鼓を打つ二人。

ガシャガシャも手を動かすがそれの音は消されて聞こえない。

ヒワヒワは両手で曲げるように繰るがそれも音は出ない。

この日も雨が降り続く。

当家の家では集まった要人たちが朝から大御幣を作っていく。

御幣切りの寸法は決まっている。

白、赤、白を重ねた三枚の奉紙を切っていく。

割合太めの竹が3本。

麻の緒で縛って奉書で巻く。

それを水引きで括る。

幣を両側に取り付けた御幣。



三枚の日ノ丸扇を括りつけてできあがった。

「これができないとメシも喰えん」と笑う。

なお、御幣作りで残った赤紙は烏帽子に付ける。

これは祭りを終えたときに峰寺の総代に差し出すのだ。



それをもって無事に奉納を終えた証しとしているというが、外すことが困難になったことから実際は予め用意したものを差し出している。

作業を済ませて一旦は昼食をとる。

座敷で談をとる要人たち。

そろそろ行く時間になったと言って装束に着替えた。

その衣装を納めている箱には墨書がみられる。

表面が「六所宮祭用装束箱」で、裏面には「干時文政元年(1818)六月吉祥出来 宮年寄・・・云々」とある。

宮年寄りの名には松尾村が二人、的野と峯寺が一人ずつで二人の世話人が記されている。

(H23.10.15 EOS40D撮影)