荻野洋一 映画等覚書ブログ

http://blog.goo.ne.jp/oginoyoichi

『ランジェ公爵夫人』 ジャック・リヴェット

2007-12-13 00:33:00 | 映画
 試写にて、ジャック・リヴェットの最新作『ランジェ公爵夫人』を見る。

 実際にマヨルカ島で撮影されたのかどうかわからないが(たぶんシチリア辺りでロケされたのではないでしょうか)、孤島の波打際にそびえる、城塞のような寺院の佇まいがただ事ではない。まるでジョゼフ・ロージーの恐るべき怪作『Boom(夕なぎ)』(1968)のエリザベス・テイラーの邸宅のようだ。
 ランジェ公爵夫人を愛してしまった主人公のナポレオン軍将校は、この礼拝堂で姿なき歌声を耳にする。リヴェットが提示したこの歌声こそ、真の意味でのaudioである。ラテン語で"au-dio"、つまり「神のエコーに抱かれること」、これがオーディオの語源なのだと言われている。将校はこのaudioに対して打音で応える、戦で負傷した義足をコツコツと響かせながら。
 厳格な戒律を墨守するカルメル会修道院に出家し、テレーズ修道女となったランジェ公爵夫人を、将校は拉致することができるのか? そこでリヴェット恒例の秘密結社が暗躍するのである。

 この謎めいたストーリー、やはりリヴェットはこうでなくては。いや、この厳格さと自由闊達さ。ヌーヴェルヴァーグはこうでなくては!


来年4月5日(土)岩波ホールにてロードショー
http://www.cetera.co.jp/Langeais/