荻野洋一 映画等覚書ブログ

http://blog.goo.ne.jp/oginoyoichi

『裏切りの闇で眠れ』 フレデリック・シェンデルフェール

2007-12-19 01:59:00 | 映画
 試写にて、『裏切りの闇で眠れ』(2006 フレデリック・シェンデルフェール監督)を見る。フランス製のフィルム・ノワール(正確にはポリシエというのだろうか)の新作に接するのは実に久しぶりだ。12歳の時に池袋地球座(現在のHUMAXシネマズ4あたりの地下劇場)で、イヴ・モンタン主演の『真夜中の刑事』(1976 アラン・コルノー監督)で初めて接して以来、新旧数多くのフィルム・ノワールをかつては見てきたが、いつのまにか関心はなくなり、最後に見た新作もののタイトルさえ忘れてしまった。

 欲望に忠実で単細胞な男たちが、真夜中のパリの街頭にて銃器で暴れまくる光景をひたすら眺める映画。意識が妙に醒めてくるこの感覚は、ハリウッドのバイオレンスものを見ている感覚に近い。メルヴィルやベッケルのノワールを見ている時にこちら側が感じる意識の混濁は、特にない。

 今年の初夏に公開されたばかりのクロード・シャブロルの非常に優れた作品『石の微笑』で、ファム・ファタールに翻弄される青年を演っていたブノワ・マジメルを、1年に2度も見ることになるとは…。この俳優だけは『裏切りの闇で眠れ』においても、少しばかりメルヴィル的なメランコリーと意識の混濁を漂わせていた。若いながらも若干古風な俳優かもしれない。


来年2月23日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
http://www.uragiri-noir.net/