荻野洋一 映画等覚書ブログ

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女優・宇津宮雅代について

2007-12-15 01:34:00 | 映画
 現在上映中の映画『呉清源 極みの棋譜』の中で、主人公・呉清源の後見役みたいな年配の女性を演じた宇津宮雅代(1948~)は、言うまでもなく故・三浦洋一の姉さん女房であったが、むかし子供心に大好きな女優だった。背筋の通った熟女の色気にまして、あのハスキーボイス…。

 TBSドラマ『大岡越前』で雪絵(大岡忠相の妻)役の初代(1970~1982)を演ったのが、宇津宮雅代であった。彼女が降板してから、雪絵役を酒井和歌子、平淑恵が二代目、三代目と引き継いでいったのだが、これがどうしても納得できなくて(苦笑)。文学座の出身ということだが、映画ではあまり見かけず、もっぱらTVドラマでのみ活躍した女優さんだったようである。

 聞けば、1960年代末ごろにやはりTBSで、新宿中村屋の創設者・相馬黒光の役で宇津宮雅代が主演した『パンとあこがれ』というドラマがあり、これがたいへん素晴らしいそうで、ぜひ見てみたいものだが、局ではマスターが保存されていないらしい(まったくこういう話が一番腹立たしい)。

 相馬黒光といえば、大正デモラクシー期における芸術家たちのパトロンヌとして名声を博したのだが、娘の恋人であった画家・中村彝に横恋慕し、泥沼の三角関係となったこともまた、知る人ぞ知る事実である。相馬黒光という人物については今後、当ブログでくわしく言及していきたい名前であるが、誰か才能のある映画作家に伝記を映画化してもらいたい気もする。パン屋創業、インドカレーの成功、多くの芸術家とのエピソード、幸徳秋水の大逆事件、そして先述の恋愛スキャンダルetc. 色とりどりな事象がぎゅっと詰まっている女性だ。

 なお脱線話題が長くなったが、宇津宮雅代は2000年の三浦洋一の死去に伴い、現役復帰した模様。今後の活躍も期待したい。


P.S.
今月4日の記事で『呉清源 極みの棋譜』の監督名を、正しくは「田壮壮」とすべきところを「田荘荘」と誤って表記していました(恥ずかしながら20年以上にわたって後者で記憶していました)。ここに訂正しお詫び申し上げます。