荻野洋一 映画等覚書ブログ

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木村威夫のこと

2007-12-29 05:02:00 | 映画
 「TITLe」(文藝春秋)の最新号には、2つの面白い対談が掲載されている。ひとつは、『人のセックスを笑うな』の監督・井口奈己と、映画美術の巨匠・木村威夫の年齢差50歳対談(採録構成・大寺眞輔)、そしてもうひとつは、『ミスター・ロンリー』の監督ハーモニー・コリンと中原昌也の対談である。井口監督の話の中で、「芯のない風景はだめだ」と木村威夫からたしなめられたロケハン中のエピソードが出てくるが、これは多くの監督たちにとって耳の痛い話であろう。『人のセックスを笑うな』『ミスター・ロンリー』共に来年そうそう公開らしい。必見だろう。


 実は私には、偉大なる木村威夫と深き縁がある。結果的には縁に達しなかった縁であるかも知れず、木村威夫の方は憶えているかどうかさえ定かではないためおこがましい表現ではあるが、私からすれば、それはやはり、一世一代の深き縁であった。
 ずっと昔、沈没する運命にあった船に乗るか乗らないかで、やり取りがあった。「君だってあの船のおそろしい運命に気づいているんだろう?」「よかったら一緒に別の船を探して、いろんな航海を愉しまないか?」