荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『ジェリーフィッシュ』 エトガー・ケレット&シーラ・ゲフェン

2008-01-05 05:46:00 | 映画
 年末最後に試写で見たものに、ちょっとばかり良い物があったのだが、年の瀬のざわめきの中でつい言及するのを忘れていたので、急いで書き留めておこう。イスラエルの男女二人組、エトガー・ケレット&シーラ・ゲフェンの共同監督デビュー作『ジェリーフィッシュ』という小品で、2007年のカンヌ映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)受賞作らしいのだが、なるほどこれは気が利いた作品だ。

 ゴダールの『アワー・ミュージック』にも出ていたサラ・アドラーという女の子が一応主演ということになっているが、テルアビブを舞台にした3つのペーソス溢れるエピソードが並行して語られる。
 題名のジェリーフィッシュとは「くらげ」のこと。こういうふわふわした不思議系のインディーズ映画がどうも苦手だという人が結構シネフィルに多いのだが、たとえば『アメリカン・ビューティー』とか『ゴースト・ワールド』のソーラ・バーチなんかがいいと思えてしまう人(例えば私です)には、非常に波長が合う作品ではないか。
 終盤の、遺体をベッドに横たわらせるといった悲痛なシーンですら、「恩寵的」と言ったら不適切だろうが、積極的な霊感と共に、一連のカットが簡潔に刻まれている。

 あまり期待していなかっただけに、拾い物をした気分にさせてくれた映画だ。


3月15日(土)より、渋谷シネ・アミューズほか全国順次公開予定
http://www.jellyfish-movie.com/