荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『アイ・アム・レジェンド』 フランシス・ローレンス

2008-01-11 02:21:00 | 映画
(注意:文中、いわゆるネタバレ少しだけあります)

 今回『アイ・アム・レジェンド』を映画化したのは、PV出身のフランシス・ローレンスなのだが、設定は優れているのだから、全体的にもう少し頑張れなかったのだろうかという怨みが残る。原作を改悪しすぎだという評価もあるが、未読の私としてはその点はなんとも言えない。

 ただ、唯一悪くないと思えたのは、舞台をあくまでNY市内という限定した地域に留めることを頑迷に守ったことだ。この視界の狭さが主人公の孤立を強調し、四面楚歌の恐怖を助長し、またゲーム的快楽をくすぐりさえする。これは、最近テレビで見た張之亮(ジェイコブ・チャン)の『墨攻』(2006)にも通じる特長だ。

 そして、ゾンビの群れと化したウィルス感染者たちの襲撃を受けた主人公が、切羽つまって思わず叫ぶ、“俺は血清を見つけた! 俺はおまえたちを助けられるのに!” という空々しく痛々しい叫び。
 知能が著しく低下し、単なる肉食獣となり果てた彼らには、もはやそんな命乞いや融和の呼びかけなど、通じるべくもない。それでも主人公は叫んでしまったのだ。そんな、どうしようもない無駄を、無駄と承知の上でしてしまったのは、彼の中に滞留した孤独、悲しみ、絶望ゆえである。このどうしようもなさは、ちょっとばかり心に引っかかった。


サロンパスルーブル丸の内他全国で上映中
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