水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第二百二十五回)

2011年02月06日 00時00分01秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百二十五
 その後、積もり積もった世間話をしばらくしていたが、話は突然、私のことが中心となった。
「大臣様のことなど、新聞かテレビで知る程度ですが、大変なんでしょうな?」
「えっ? ああ…まあ、そうで
すね。事務のパイプは事務次官、政治方面は政務次官がいますし、副大臣もおりますから、まあ直接、報道される問題を除けば、暑からず寒からずですよ。ただ、私の場合は例外で、毎日が必死ですがね。ははは…」
「いやいや、ご苦労さまです、本当に…」
 沼澤氏はペコリと私に頭を下げた。
「やめて下さいよ、沼澤さん。私など大臣の器(うつわ)じゃないんですがね。まあ、今云った他の方々もいますし、いざとなりゃ、玉にお伺いをたてる方法もありましょうし、なんとかやってるんですよ」
「米粉プロジェクトは世間で今、好評ですが、どんな塩梅(あんばい)でしょうな?」
「はい、私が煮付(につけ)先輩から大臣を引き受けたのも、そのプロジェクトがあったからですが、小菅(こすが)総理の提唱事業ですしね」
「なるほど…。ところで話は変わりますが、ご自分からコンタクトは取れるようになりましたか?」
「ええ、お蔭さまでなんとか…」
「ほう、それはよかった」
 沼澤氏はマティーニをチビリと口に含んだ。


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