あんたはすごい! 水本爽涼
第ニ百三十五回
久しぶりに早朝のA・N・Lで軽食を済ませて会社へ向かった。会社へ着くと、やはり外観は私が東京へ出る前と少しも変わらず、月日だけが無駄に過ぎた感は否(いな)めなかった。しかし、その私の考えは甘かった。通用門を潜(くぐ)り、正面の監視室に目を向けると、見知らぬ中年の男が座っていた。
「あっ! おはようございます。あのう…禿山(はげやま)さんは?」
「えっ? 禿山さんですか? 禿山さんは先月、退職されましたよ。なんでも、外国の息子さん夫婦が引き取るとかいうことで…」
「ええっ! そりゃ、本当ですか?」
「ええ、もちろんです。嘘を云っても仕方ないじゃありませんか」
「はあ。それは、まあそうですが…。すると、禿山さんは、もう日本にはいらっしゃらないんでょうか?」
「ええ…。私も禿山さんに聞いたという同僚からの、また聞きなんですがね」
「そうでしたか…」
月日は人を待ってくれないことを実感した瞬間だった。ただこの事象も、玉が霊力でなしたことなのかどうかまでは判明しなかった。一度、こちらからお伺いを立ててみるか…と、私はふと思った。将来のことに関しては霊界の決めで答えられないと告げた玉だが、すでに済んだことだから答えてくれるだろう…と踏んだ訳である。

第ニ百三十五回
久しぶりに早朝のA・N・Lで軽食を済ませて会社へ向かった。会社へ着くと、やはり外観は私が東京へ出る前と少しも変わらず、月日だけが無駄に過ぎた感は否(いな)めなかった。しかし、その私の考えは甘かった。通用門を潜(くぐ)り、正面の監視室に目を向けると、見知らぬ中年の男が座っていた。
「あっ! おはようございます。あのう…禿山(はげやま)さんは?」
「えっ? 禿山さんですか? 禿山さんは先月、退職されましたよ。なんでも、外国の息子さん夫婦が引き取るとかいうことで…」
「ええっ! そりゃ、本当ですか?」
「ええ、もちろんです。嘘を云っても仕方ないじゃありませんか」
「はあ。それは、まあそうですが…。すると、禿山さんは、もう日本にはいらっしゃらないんでょうか?」
「ええ…。私も禿山さんに聞いたという同僚からの、また聞きなんですがね」
「そうでしたか…」
月日は人を待ってくれないことを実感した瞬間だった。ただこの事象も、玉が霊力でなしたことなのかどうかまでは判明しなかった。一度、こちらからお伺いを立ててみるか…と、私はふと思った。将来のことに関しては霊界の決めで答えられないと告げた玉だが、すでに済んだことだから答えてくれるだろう…と踏んだ訳である。