水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百四十六回)

2011年02月27日 00時00分00秒 | #小説
 あんたはすごい!    水本爽涼
                                        
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百四十六
『そんなことは、ありません。今に分かりますよ、塩山さん。…他に、何か?』
「えっ? いや…まあ、これぐらいですが」
『そうですか…。じゃあ、これで。また…』
 いつの間にか私は、ウトウトとしてしまった。そうして、白々と朝が巡った。
 煮付(につけ)先輩が云っていた十日は、瞬く間に過ぎ去った。その間、私は鍋下(なべした)専務、病気全快により復帰した炊
口吹男(たきぐちふきお)社長とその件について話し合い、結論を得ていた。私はふたたび無報酬の顧問として社外へ去ることになった。むろん、内閣が倒れた折りには復職するという条件を取りつけた上でのことだった。
「そうか…。なら、その時はひとつよろしく頼むぞ。さっそく、小菅(こすが)さんに報告しておかなきゃいかんな。喜ばれると思うぞ、ははは…」
「いやあ、大してご期待に添えるかどうか…」
 私は先輩に合わせて笑いながら云った。美人秘書の日浦(ひうら)君が別室にいる手前、聞こえない程度の小声である。
「うん! それでいい。俺だって、小菅(こすが)さんの力になれるかどうか分からんのだ。相手は世界だからなあ…、舞台がでかい!」
「たしかに…。それじゃ、失礼します」
 携帯が切れた直後、別室のドアが開き、日浦君が遠慮がちに入ってきた。

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