水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第二百四十四回)

2011年02月25日 00時00分00秒 | #小説
 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百四十四
「長話になるから切るぞ。また、かける。今回も十日ほど待つから、それまでに考えといてくれ」
「はいっ! 態々(わざわざ)、どうも…」
 なぜか、煮付(につけ)先輩には頭が上がらなかった。私は礼を云いながら電話を切っていた。
「なんなの?」
 ママがグラスを拭きながら訊(たず)ねた。
「ああ…、いつやら話した先輩です」
「国会議員さんの?」
「えっ? ああ、まあ…」
 私は曖昧(あいまい)に濁(にご)した。ボックス席のカラオケは相変わらず盛り上がっていて、別世界のようであった。しばらくの間、しんみりとグラスを傾けて、私は勘定を済ませた。
「それじゃ、ママ。また来ます…」
「お気をつけて…。またねっ」
 早希ちゃんがボックス席から手だけ振った。私は軽く片手を上げて返した。ママの方はニコッと愛くるしい笑顔を見せた。美形だから、どこかそそるものがあるが、やはり同性かと思えば、すぐ萎(な)えた。下ネタではなく、プラトニックなものである。
 眠気(ねむけ)駅まで漫(そぞ)ろ歩いて、酔いもほどよく醒め、心地よかった。煮付先輩の電話は、やはり玉の霊力によるものだろうか? などと思いながら、私は夜道を歩いていた。
 帰宅して眠りにつく前、私はこちらから玉にコンタクトをとろうと、ベッドに横たわりながら集中して念じていた。

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