あんたはすごい! 水本爽涼
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第ニ百六十回
二週間後、私はふたたび世界の人となった。小菅(こすが)総理に随行する形で長壁(おさかべ)財務大臣とともに国連へ旅立ったのである。ニューヨークの国連本部へは一度行っていたから、要領はある程度、分かっていた。だから、困るということはなかった。ただ、通訳を交えての各国要人との会談や会食を共にする機会は増えた。小菅総理が世界に向けて発信しようとする地球語創設の一大プロジェクトを今、私は現実に行おうとしているのだ…と思えば、要人達との会談も弁が猛(た)けた。また、小菅総理が総会でその旨を提案説明し、特別に私が補足演説を行ったのは、前回の食糧問題を回避しようと世界へ向けて発信された米粉プロジェクトの時に続いて二度目で、私も少なからず興奮していた。私の演説は満場の拍手をもって歓迎されたが、降壇のときは両脚が震えた。
「ははは…塩山さん、さすがでした」
「いやあ、どうも…」
小菅総理は降壇した私に讃辞らしき言葉をかけてくれた。軽く、いなしたが、何がさすがなのかは、その後も意味不明だった。私と同様に補足演説に立った長壁財務大臣も、総理が演説した変動固定相場制の詳細をぶち上げ、拍手の中を降壇した。総理は彼にも讃辞を送って迎えたが、国際社会に向けて日本が発信する姿勢が各国に印象づけられた一幕だった。