水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百七十七回)

2011年03月30日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百七十七
 その夜、私はついうっかりして、ママへの電話を忘れていた。煮付(につけ)先輩や他の大臣連中と夕食を済ませたあと、マンションへ真っすぐ帰った私は、すっかり忘れていたようで、風呂に浸かってから寝酒を喉へ軽く通し、ベッドへ潜(もぐ)り込んだ。そして五分ばかりが経った頃、携帯の呼び出し音がした。こんな夜更けに、いったい誰だ! と少し怒れたが、ふとママへ電話をかける一件を思いだした。その瞬間、携帯音はママからに違いない…と思え、私は慌(あわ)てた。急いで枕元の携帯を手にすると、やはり予想したとおり、ママの声だった。
「なによお~、満ちゃんから電話するって云ったから、待ってたのよお~」
「いやあ、すみません。つい、うっかりしてました。すみません」
「そう何度も謝らなくてもいいわよ。別に怒ってんじゃないんだからさあ」
「長距離、高くつきますので、こちらから、かけなおします」
「いいわよお~、そんなの。深夜だし、無料通話分があるから…」
「それは、いけません。こちらからかけるって云ったんですから…」
「そおう? …なら」
 ママは電話を切った。私はすぐさま、リダイヤルした。


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