水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百六十一回)

2011年03月14日 00時00分00秒 | #小説

 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百六十一
 国連日程は多忙を極めたが、それでも慣れもあってか恥をかくというほどのこともなく、無難に諸事は進んでいった。
「どうもお二人とも御苦労さまでした…」
 小菅(こすが)総理は日程が終了し、戻る帰路の飛行中、そう漏らした。むろん、機は政府専用特別機で、乗務員や一部の随行員を除けば乗客等の人影はなかった。民間人の私が社用で飛び回っているのとは訳が違った。
 小菅総理、私、長壁(おさかべ)財務大臣が全世界へ向けて発信した新提言はその後、世界各国の注目するところとなり、地球語においては国連に専門部会が立ち上げられ、創設への第一歩が始まるに至った。また、変動固定相場制の提唱もIMFで決議に向けての検討が行なわれ、近く実現される見透しとなった。
 日本へ帰着した私は、ひとまず落ち着きをとり戻したが、それもそう長くは続かなかった。国内プロジェクトとして小菅総理が推(お)し進める保安省設置大綱が正式に閣議決定され、動き始めたのだ。もちろん、他省の私は直接、関連法案作成の任にはなかったが、酒盛祝雄(さかもりいわお)防衛大臣兼特命大臣を全閣僚挙げて補佐せよ、との総理方針の下(もと)、各大臣交代で国家戦略室へ通う破目になっていた。まあ、米粉プロジェクト時に費やした労力に比べれば、微々たるものだったのだが…。


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