幽霊パッション 水本爽涼
第四十六回
当然、幽霊平林もスゥ~っと上山の後ろを移動する。
『これでも、身辺には気を遣ってるんですよ、出るときは』
「えっ!? テレビや映画しゃないんだから、なんか、出演するときは・・みたいな云い方、やめてくれないかなあ」
『はあ…、そんなつもりで云ったんじゃないんですが…。正直、云いますと、僕達って、この世に現れると抹香の匂いがするらしいんです。だから、消臭スプレーで消してから現れるんですよ』
「ほう…、あの世にも、そんなもんがあるのかい?」
『ええ、あるんですよ。幽霊本舗ってとこで買ったんですがね』
「幽霊本舗…。なんか、娑婆っぽいね。まっ、いいか…。なにもない世界かと思ってたんだが…」
『いや、そんなことはないんです。ちゃんと、あるんです。現に、この僕が云ってんですから、間違いないじゃありませんか』
「そりゃまあ、そうだけどさ…」
上山はタジタジとして引き下がった。
『まあ、そんなことは、いいんです。それより、先程の続きは?』
「ああ、そうだった。とりあえず佃(つくだ)教授にお会いして、なんとか我が社で作れるようにパテントを取る交渉はしてみる。ただ、商品化となるとなあ…。需要が見込めんからなあ…」
『それに、霊動といっても、まだ実証された訳じゃありませんからね』
「そういうことだ。今の状況では子供の玩具(おもちゃ)としか世間は見ん。ノーベル賞に匹敵するするような発明なら別だが…」
『ええ、まあ…。この話も実証され、ノーベル賞でも受賞となれば、多少の需要はあるのでしょうが…』
二人は合せたように、同時に腕組みをした。