幽霊パッション 水本爽涼
第四十七回
「まあなあ…。研究機関や研究者は買うだろうが…」
『余り売れそうじゃあ、ないですよね』
「ああ…、安眠枕ですら、お蔵入りだったからなあ」
『そうですよね…』
一人と一霊…前にも云ったと思うので、敢(あ)えて今回も二人と呼ぶが、二人は考え込んでしまった。
「しかし君、私達が解明したかったのは、そうじゃないだろ? 君と私が、なぜ因縁を持ってるかってことだよ」
『ああ、そうでした。なぜ、僕の姿が課長にだけ見え、僕には課長が白っぽく見えるのかを探ることでしたよね』
「そうだよ、それそれ! 当初の目的は…」
『売れなくても、いいんでした』
「そうそう、それは佃(つくだ)教授に会うための方法として考えたんだったな」
『ええ、それを忘れてました』
上山は賑やかに陽で笑い、幽霊平林は寂しそうに陰で笑った。
「気楽にいこうや。近日中に目鼻はつけるさ。まあ、孰(いず)れにしろ、他力本願だけどな」
『ええ、そうですよね。佃教授が乗ってくれなきゃ、それまでですしね』
「その通りさ。で、さあ、話は変わるけど、ひとつ頼んでもいいかな?」
『えっ? 僕にですか? どんなことでしょう』
「君さ、現れるときが不規則だろ? 不規則っていう云い方も妙なんだけどね。で、なにか二人だけのサインっていうか、合図みたいのを決めときゃ、どうかと思ってさ」
『はあ…。それって、僕がその合図があれば現れる、なんてことですか?』
「うんっ、まあな…。昔、ヒーローものでさ、ヒーローを呼ぶとき、何かやったろ? そんなのさ」