「社内での異動はいいんだが、出向は、さすがになあ~」
「そうですよ! 当然です。私なら即、やめます」
道坂が、また怒り顔で言った。
「君らはまだ若いから、採ってくれるところはあるがな。俺の場合、そうはいかん」
里山はしんみりと、おにぎり定食に付いたきつねうどんの麺をひと筋、啜(すす)った。
「なに言ってるんです。課長だってまだ若いじゃないですか」
田坂は、やんわりと里山を慰(なぐさ)めた。里山は、しばらく考えてから結論を出すよ・・と、二人に暈(ぼか)して湯呑みの茶を啜(すす)った。
帰宅した里山は沙希代の目が届かないことを確認し、小次郎に相談した。
「小次郎、どう思う?」
『それはご主人の決断次第ですから…。ご厄介(やっかい)になってる僕が、どうこう言える話じゃないんで…。奥さんには?』
「まだ話してない。あいつも働いてるし、余り心配させるのもな…」
『僕と会社の二件あるんですよね…』
「何かいい知恵はないかい?」
『分かりました。考えてみましょう』
小次郎は学者のような語り口調で、穏やかに言った。